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2018-01-10 00:00
最近の中国外交
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
米国の戦略研究者のエドワード・ルトワック(同人の著書は、習近平も読んでいるといわれる)が、池上彰との対談で(文芸春秋 1月号)、中国は外交が下手だと述べている。中国の傍若無人の最近の動きは、周辺国のみならず世界に警戒感をもたらしている。こうした点に関して、知人のインドおよび中国の学者と、最近の中国外交について懇談を行った。
まず知人のインド人学者との懇談の内容を紹介したい。同インド人学者は、2013年ごろ「中国はインドの最大の貿易相手国だ。国境問題、中国・パキスタン関係など摩擦要因はあるものの貿易、投資、観光その他インド・中国関係は右肩上がりだ。日米がインドと提携を求めてくるのは、インドに『中国へのヘッジ』の役割を期待してのことだろう。それには全面的に乗るわけにはゆかない」と力説していた。しかし、同インド人学者が昨年末には、「2016-17年にかけ印中間の貿易額は伸びて700億ドル以上になった。しかし、インドの赤字額は500億ドル以上だ。中国商品の急増はインドの国内産業に壊滅的な打撃を与えている。期待した投資は、日本の250億ドル以上にはるかに及ばず、16億ドル程度だ。それに中国の投資は、インドの大手製薬会社買収など敏感な部門が多い。一方、インドは、AIIB、一帯一路には参加している。中国経済の発展の恩恵に乗り遅れまいとしてはいる。インドの動きは、錯綜した部分もある。昨年5月の中国での『一帯一路』サミットに印は欠席した。習近平の面子をつぶした形だ。中国は、例により色々嫌がらせを仕掛けてきている。ブータンでの中国による道路建設はその一例だ。外交の場面で、中国はインドの違法行為を様々な形で言いふらしている」と中国脅威論を滔滔と述べていた。
小生から、息子が上海勤務で上海訪問の機会が多いオランダの知人からもらったクリスマスメッセージに、上海で戦時中日本がいかにユダヤ人を虐待したかに触れられていて、中国はここまでやるかと思ったと伝えると、そのインド人学者は、「オランダは西欧各国の中でドイツを除くと一番ユダヤ人を虐殺したといわれている。だから、彼らは日本などがユダヤ人を虐待したというと、それに飛びついて宣伝活動を行う。こうした点は、中国は上手い。一方、西欧の心ある人々は、民主主義、法の支配、基本的人権概念にことごとに文句をつけ、こうした考えは、中国を領土的に分離、経済的に挫折させるのが狙いだという中国に少し嫌気がさしているようだ。勿論彼らもインドと同じように、最近のマクロン大統領の訪中にみられるように中国の経済発展にあやかる姿勢には変わりはない。米学者が上海の公園に建てられた『犬と中国人は入るべからず』の看板について永久に非難されると述べていることや、上海副市長が述べた『上海の中産階級がみなアメリカ人のハウスボーイを持った時点で中国はやっと真の金持ちとなったと納得する』は、今の中国を理解する鍵となる言葉だ。同じ共産党独裁体制のベトナムでさえ、反中国感情が強くなっている。マティス米国務長官が、2018年ベトナムのカムラン湾へ米空母を寄港させることで、ベトナムと合意したとの発言は注目される」と述べていた。
次に、知人の中国人学者との懇談の内容を紹介したい。小生より、最近の中国の日本への微笑はどう考えたらよいのかと質問したところ、その中国人学者は、「貧しい国との連携には、やはり限度がある。例えばベネズエラに一時、中国人が50万人以上滞在し、投資も活発に行った。しかし、同国は今や破産国だ。中国は金をどぶに捨てたも同然だ。金のある国との経済関係の大事さに気づきだしたわけだ」と述べた。小生から「すると中国外交は、強硬路線からソフト路線へ変わるということなのか」と問うたところ、中国人学者は「それは、誰にも分からない」と答えた。そして続けて、「自分が注目した公開情報は、中央公論1月号の『日中知識人座談会』だ。この座談は、党大会前に行われたようだが、今頃掲載された。行間を読むと如何に知識人が口をふさがれフラストレーションを抱えているかが伺える」と述べていた。小生より「中国国内の政治の不安定さに対する懸念があるのか?」と質問したところ、同人は、笑って答えなかった。
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