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2017-12-13 00:00
中国は平和主義国家なのか
倉西 雅子
政治学者
あくまでも核・ミサイル開発の放棄に応じようとしない北朝鮮問題に対して、アメリカは、軍事的圧力を強めると共に、武力行使をも辞さない構えを崩しておりません。その一方で、中国は、話し合い解決を主張しております。交渉による解決は、国連憲章も推奨する平和的解決手段の一つであるために、各国の左派勢力をはじめ、一定の賛同者を得ています。軍事力=悪と捉える絶対的な平和主義者の耳には、中国の主張の方がよほど心地よく響くのです。それでは、中国は、平和主義国家なのでしょうか。
建国以来、中国は、自国を平和主義国家と見なしてきました。中華人民共和国憲法にも、平和五原則―主権と領土保全の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存―が掲げられています。この原則は、1954年6月に周恩来首相とインドのネルー首相との間でも合意され、翌55年4月にはアジア=アフリカ会議において平和十原則へと発展し、非同盟運動の柱ともなりました。しかしながら、中国が、現実の国際社会においてこの原則通りに行動したのかと申しますと、御世辞にも模範的であったとは言えません。そもそも、上記の平和五原則も、中印合意の2か月前に「中華人民共和国とインド共和国の中国チベット地方とインド間の通商・交通に関する協定」の前文に記されたものであり、1951年に発生した「一七条協定」の調印強要とその後の人民解放軍によるチベット占領によって、インドと国境を接するに至ったために締結されたものです。チベット侵略という軍事行動を起こしながら平和五原則を唱えたのですから、厚顔無恥としか言いようがなく、中国の平和主義は、その始まりからして欺瞞に満ちているのです。この一例を見ても、中国が語る美しい言葉を迂闊に信用してはならないことは明白です。
過去においては、弱小の国に対しては常に軍事力を以って“解決”してきた中国は、今日でも、習近平国家主席は“中国の夢”の実現を唱え、人民解放軍を戦える軍隊に改組した上で、世界一の軍隊に育て上げることを“人民”に誓っています。その一方で、北朝鮮問題に対しては、話し合い路線が既に行き詰りを見せているにも拘らず、平和主義的な立場からアメリカの武力行使に反対しているのです。ここで、北朝鮮問題に拘わらず、中国があらゆる問題において本心から対話を金科玉条とするならば、将来に向けて軍事力を増強する必要はないのではないか、とする素朴な疑問が湧いてきます。そして、この矛盾にこそ、平和と云う美名に隠れて自らの利益拡大を狙う中国の強かな狡猾なる善性悪用戦略が見え隠れするのです。
中国の行動パターンからしますと、中国の平和主義は、現時点でアメリカが北朝鮮に対して武力行使した場合、北朝鮮、並びに、自国には勝ち目がないという判断に基づく打算に過ぎないのでしょう。おそらく、中国は、当問題については、“勝てない戦争はしない”、もしくは、“可能な限り阻止する”、あるいは、“一時的に和解して味方に回り、協力の対価を得る”といった戦略で臨んでいると推測されるのです。仮に、トランプ米大統領の訪中時に米中合意が成立したとすれば、一時的和解の路線であり、最終手段としてアメリカの対北武力制裁を認めつつも、戦後処理や台湾問題など、その他の分野で“漁夫の利”を得ようとしているのかもしれません。言葉と行動が一致しない国は信用ならず、ゆめゆめ中国を平和主義国家と見なしてはならないと思うのです。
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