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2017-12-05 00:00
北朝鮮問題の平和的解決は可能か
加藤 成一
元弁護士
北朝鮮は、11月29日新型大陸間弾道ミサイルを日本海に向けて発射し、日本の排他的経済水域に落下させた。これにより北朝鮮は、核弾頭搭載可能の大陸間弾道ミサイルが米国本土全域を射程に収めた、と宣言している。その真偽については諸説があるが、いずれにせよ、もはや看過できない事態と言えよう。問題は、度重なる国連決議に違反して、北朝鮮が計6回の核実験と長距離弾道ミサイルの発射を繰り返し、もはや事実上の「核保有国」として、一定の「核抑止力」を獲得したとみられる北朝鮮に対し、果たして平和的手段すなわち国連等の経済制裁と対話のみによって、核とミサイルを放棄させることが可能かどうかは冷静に分析する必要がある。その場合、北朝鮮の核・ミサイル開発の究極の目的を検証する必要がある。
核・ミサイル開発の目的が、北朝鮮の体制維持のみであれば、米国が体制維持を保証すれば、放棄の可能性はあろう。しかし、北朝鮮の亡命外交官太永浩元イギリス大使館公使は、11月1日米下院外交委員会公聴会で、「北朝鮮指導部は、南ベトナムからの米軍撤退の経過を研究している。現在の韓国を南ベトナムに見立て、そこから在韓米軍を撤退させるため、核やミサイルで圧力をかける。圧力に屈した米国が在韓米軍を撤退させれば、外資が引き上げ、南ベトナム同様に韓国の体制崩壊につながる、というのが金正恩委員長の狙うシナリオだ。」(11月2日ワシントン時事)と証言している。仮に、この証言内容が事実とすれば、北朝鮮による核・ミサイル開発の究極の目的は、体制維持ではなく、北朝鮮主導による「朝鮮半島統一」であることは明らかである。
そうすると、北朝鮮に対しては、核とミサイルを手段とする「朝鮮半島統一」の目的そのものを放棄させない限り、北朝鮮に核とミサイルを放棄させることは不可能ということになる。しかし、北朝鮮が、平和的手段すなわち国連等の経済制裁と対話のみによって、金日成以来の国是である「朝鮮半島統一」の目的を自ら放棄することはあり得ないであろう。そうだとすれば、あとは軍事的手段による解決しか残されていないことになる。他国による侵害が差し迫ったものであるという「急迫性」の要件と、なされた自衛措置が他国による侵害と釣り合いのとれたものでなければならないとする「均衡性」の要件を充足すれば、特定の攻撃が急迫していると信じるに足りる合理的理由があれば、他国による武力攻撃が発生していない段階でなされる先制的自衛措置も、国際法上許容されると解されている(山本草二著「国際法」新版732頁~733頁、2003年有斐閣刊)。
歴代日本政府の憲法解釈でも合憲とされる、座して死を待たない「敵基地攻撃能力」もこれに該当すると言えよう。度重なる国連決議を無視して核実験と弾道ミサイル発射を繰り返し、日本及び米国に対して、「日本列島を核爆弾で海に沈める。」「米国本土を灰にする。」などと恫喝する北朝鮮の脅威が急迫し、且つその脅威に対処するため他に選択肢がない、すなわち平和的手段による解決が不可能であると米国が最終的に判断した場合に、米国による北朝鮮に対する先制攻撃は、上記国際法理論によれば許容される余地がある、と解すべきであろう。
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