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2017-12-04 00:00
エネルギ-・ツァーの座を狙うプーチン
川上 高司
拓殖大学教授
11月30日、ウイーンでOPEC会議が開催された。議題はひとつ、減産を継続するかどうかである。現在の原油価格は1バレル60ドル台にあり、今年7月に45ドルまで下落したことを考えるとかなり持ち直したといっていい。石油は世界が必要としている。そのため石油価格はこれまでは主に産油国に主導権があった。その最も頂点に立っていたのがサウジアラビアである。
世界の大国であるアメリカですらサウジアラビアには気を遣い、サウジとの関係を良好なものに保ってきた。しかし、時代が変わり、オバマ大統領時代にはアメリカの外交はサウジに配慮することがなくなった。シェールオイルの開発によりアメリカは産油国となりサウジに気兼ねする必要がなくなったのである。その隙間にがっちりと入り込んできたのがロシアのプーチン大統領である。彼はユーラシアに張り巡らされている石油・天然ガスのパイプラインを駆使して地政学を展開してきた。
たとえば今年8月、ロシアはトルコとイランの3カ国で70億ドル投資してイランの石油・天然ガスの開発をすることで合意した。また、住民投票で注目を集めたイラクのクルド人自治州にあるキルクークへの4億ドルの投資でイラク自治政府と合意した。キルクークの石油はトルコのパイプラインによって地中海へと運ばれることになっている。さらにロシアはイランから1日あたり10万バレルの石油を購入し、その支払いとして450億ドル分の商品を輸出する(ただし半分はユーロで支払い)という協定も結んでいる。アメリカがイランへの経済制裁を強化する中、それをビジネスチャンスと政治的チャンスに捉えてしたたかに中東、そしてエネルギー市場での覇権を固めつつある。
いまでは、OPECのメンバーではないロシアがウイーンのOPCE会議で何を言うか。それが世界のエネルギー市場を大きく左右しひいては世界経済を揺さぶる。かつてのサウジアラビアが担っていた役割はいまやプーチンが手中に収めている。まさに彼は世界のエネルギー・ツァーと言っても過言ではない。アメリカはこのまま中東からプレゼンスを失い本当に「アメリカ・ファースト」の国になるのか。サウジアラビアの不穏な国内情勢も予断を許さない。シリアの内戦も終結したわけではない。イエメンの人道的危機は深まるばかりである。流動的で予測のつかない中東情勢にトランプ大統領はどう外交政策を展開するのか。注目していきたい。
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