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2017-11-16 00:00
(連載2)米中会談から日本が汲むべきメッセージ
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
米中首脳が立った南北中心軸は、米中が盟友として抗日戦争を戦った歴史も刻んでいる。もし習近平がトランプに盟友時代の秘話を打ち明けていたとしたら、相当手の込んだ舞台裏の演出になる。もっとも、大型商談のそろばん勘定を気を取られたトランプは、ほとんど関心を持たなかったに違いないが。過去の米中首脳会談の隠されたメッセージからも、日本は教訓を読み取ることができる。昨年9月、主要20か国・地域(G20)首脳会議が浙江省杭州で行われた際の米中首脳会談は、習近平が当時のオバマ米大統領を西湖畔の西湖国賓館に招いた。45年前、電撃訪中をしたニクソン米大統領が周恩来首相と、国交正常化に向けた「上海コミュニケ」を練ったゆかりの場所だ。米中が関係構築の初心に戻ることを示唆したメッセージだったが、日本にとっては頭越しをされた苦い外交の経験、いわゆるニクソン・ショックの記憶が残っている。現在も日本を抜きにした米中の緊密化は着実に進んでいる。
また、習近平が2014年11月、北京のAPEC首脳会談に訪れたオバマ大統領を北京・中南海に招待した際は、「中国近代以降の歴史を知ることは、中国人民の今日の理想と前進の道を理解するために重要だ」と述べた。中南海に政治の謀略がはびこった清朝末、中国は列強の侵略を受け、半植民地となった。米国も侵略に加わったが、後発だったため中国に残した傷跡は少ない。むしろ、深い関係を築くきっかけを残している。
それは、習近平、胡錦濤をはじめ歴代指導者を多数輩出したエリート校、清華大学の生い立ちに隠されている。清朝末の1900年に起きた義和団事件では、列強による中国支配に反発した秘密結社・義和団が北京の各国公館エリアや天津の租界を襲撃し、日本や米英露など8か国が連合軍を派遣して鎮圧した。清朝は事後処理として巨額の賠償金を要求された。米国は中国人を米国に留学させるための費用として賠償金を中国に返還し、その資金で設立された留学生養成機関が同大の前身、清華学堂である。清華大学人脈は、現在では政権の中枢を占め、深い米中関係を築く強固な土台となっている。
日本は中国に最も深い侵略の傷跡を残したが、改革開放にあたっては、どの国よりも大きな貢献をした。それは習近平も天皇陛下の前で認め、感謝している。問題は功罪の伴う日中の歴史を日本側がしっかりと認識し、継承してきているかかということである。習近平はトランプとの会談で、両国間の青少年を中心とした人的交流を、「先人が木を植え、後に人が樹陰を楽しむ」長期的な事業だと形容した。自らの母校である清華大学の創設エピソードが脳裏にあったのかも知れない。日中間の人的関係に、そうした長期的な視点があるのかどうか。実に心もとない。(おわり)
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