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2017-10-27 00:00
(連載2)アメリカの対北先制は国際法上許されるか
倉西 雅子
政治学者
もっとも、国連憲章では、先制について具体的に言及されているわけではなく、この点に関して参考となるのは、1974年に国連総会で採択された「侵略の定義に関する決議」です。法的拘束力はないものの、その第2条の文面には、「国による(国連)憲章に違反する武力の先制行使は、侵略行為の一応の証拠となる。…」とあります(もっとも、最終的な判断は、安全保障理事会に任されるとする…)。それでは、仮にアメリカが北朝鮮に対して先制攻撃を行った場合、この行為は、国際法において“侵略”と認定されるのでしょうか。
北朝鮮は、アメリカからの攻撃を自国に対する“侵略”と主張しておりますが、この問題の根本原因は、北朝鮮による度重なる国際法違反にあります。朝鮮戦争の発端然り、核開発然りであり、国際法秩序が成立している今日の国際社会では、北朝鮮の行為こそ、取締りを受けるべき“犯罪”として認定されているのです。となりますと、アメリカが先制したとしても、それは、国際社会における警察活動の一環と言うことになりましょう。
否、NPTの趣旨に沿えば、核の不拡散は核保有国の責任でもあります。一般の社会でも、法で禁じられている大量殺人を成し得る凶器を以って隣人を脅迫したり、隣家の方向に向けて自家製の爆弾を投げたり、近隣の家々の破壊殺害を公言する危険人物が現れれば、先ずはその身柄を取り押さえ、凶器を押収するために、警察はその人物の家に踏み込むことでしょう。
国際法が禁じているのはあくまでも犯罪者側の行為であり、警察側の制止行動ではないはずです。オバマ前大統領は“世界の警察官”の役割放棄を宣言しましたが、北朝鮮問題におけるアメリカのトランプ政権の行動は、まさしく国際社会からの危険の排除を担う“世界の警察官”そのものなのではないでしょうか。このように考えますと、アメリカの対北先制は、国際法上の“侵略”には当たらないと思うのです。(おわり)
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