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2017-10-20 00:00
「専守防衛」と「抑止力」は矛盾しない
加藤 成一
元弁護士
今回の衆議院選挙の争点の一つとして「憲法9条改正問題」がある。この問題を考える場合、論点を整理しておく必要がある。まず、憲法9条が国家の自衛権を否定したものでないことは、歴代政府の確定した憲法解釈であり、最高裁判所の判例である。昭和34年12月16日の砂川事件最高裁大法廷判決は、「憲法9条は、我が国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定していない。我が国が、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは、国家固有の権能の行使であって、憲法は何らこれを禁止するものではない」(「判例時報」208号)と判示している。
憲法9条が、国家の自衛権を否定していないことについては、自民党から共産党まで異論がなく、憲法学者にもほとんど異論がない。問題は、自衛権を担保するための実力組織である自衛隊の保有が憲法9条に違反するかどうかで見解が分かれていることである。しかし、自衛権の存在を認めながら、これを担保するための実力組織である自衛隊を違憲として否定することは、論理矛盾であろう。なぜなら、実力組織がなければ自衛権を担保することはできず、自衛権の存在は有名無実となるからである。自衛隊違憲論を唱える憲法学者の中には、実力組織がなくても、平和外交の推進や、ゼネストなど国民のレジスタンス運動によって、侵略を防止し平和を維持できると主張する学者もいる。しかし、核ミサイルで日本列島を海に沈めると恫喝する北朝鮮の脅威や、核を保有し軍拡を進める中国による尖閣諸島奪取の危険性などを考えれば、これがいかに非現実的且つ危険な主張であるかは明らかである。
そもそも、国家の自衛権には、個別的自衛権と集団的自衛権があるとされる(国連憲章51条)。このうち、個別的自衛権からは、いわゆる「専守防衛」の考え方が出てくる。「専守防衛」とは、他国から攻撃されない限り攻撃しないという考え方であるとされる。しかし、「専守防衛」を貫くためには、他国から攻撃されてから反撃するのではなく、他国からの攻撃をあらかじめ抑止することが最も重要であり、「専守防衛」と「抑止力」は決して矛盾しないと言えよう。
そうだとすれば、「抑止力」特に「核抑止力」を高めるためにアメリカとの同盟関係の一層の強化と、日本自身も攻撃を抑止するに足りる能力を保有することが求められよう。ミサイル防衛の強化のみならず、敵基地攻撃能力や核兵器の保有なども、我が国を防衛するための「必要最小限度」である限り、憲法上禁止されず合憲であり、政策判断の問題であることは、歴代政府の確定した憲法解釈である。このように、「専守防衛」と「抑止力」は決して矛盾せず、むしろ表裏一帯の密接不可分の関係にあるから、「抑止力」を高めるための憲法9条改正や防衛力の強化は、「専守防衛」に反するものではないばかりか、日本にとって喫緊の課題であると言えよう。
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