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2017-10-05 00:00
野党分裂で自民が漁夫の利の兆し
杉浦 正章
政治評論家
安倍政権が泰然自若としているのに対して、野党は小池新党に逆風が吹き始めており、民進党の分裂が液状化現象を生じさせている。民進系支持労組連合の混乱に波及している。公認決定で浮かび上がった希望の党による選挙戦略は、戦略というより行き当たりばったりの「野合選挙」の実態をあらわにしている。野党で堅調なのは苦し紛れに枝野幸男が結成した立憲民主党のみである。しかし、今のところ擁立候補は50人を上回る程度とみられており、リベラル系が主軸となって政権を左右する可能性は少ない。この結果自公連立が政権を維持できる公算が強まっている。安倍は野党の体たらくについて「新しいブームからは何も生まれない。政策こそが未来を切り開く。愚直に政策を訴える」と強調している。これは選挙戦の王道を行く姿勢であり、行き当たりばったりで野合を繰り返そうとしている希望などとの違いを鮮明にさせている。安倍の解散戦略は野党にくさびを打ち込み、そのうろたえぶりからいって成功の部類に入りそうだ。
しかし、注目すべきは枝野の立憲民主党だ。革新であるはずの民進党の大勢が保守の希望の党へと臆面もなくひざまずくなかで、リベラルを屹立させている。泣きの涙で枝野が結成に結びつけたにもかかわらず、リベラル勢力の“核”となりつつあるからだ。リベラル系の希望への逆襲が立憲を軸に始まろうとしているのだ。社会党から連綿と続く左派勢力が西南戦争の西郷隆盛に集まった行き場のない浪人達のごとく、集まりだしたのだ。ツイッターでのフォロワーの数は2日間で10万人に達しており、12万人の自民党に迫る勢いだ。もっともツイッターのフォロワーは政党支持率ではないからそのままの勢いが出るわけではない。立憲は既に候補者を50人近く確保しており、まだ増える可能性がある。これに左翼総本山の共産党が“すり寄り”はじめており、枝野の選挙区埼玉5区の候補を降ろし、エールを送った。逆に同選挙区には希望が刺客を送るから行ってこいではある。しかし、左翼リベラルの結集といっても容易ではない。民進支持母体であった労組連合が共産党との共闘には反対の路線をとり続けているからだ。その連合は政党支持をどうするかで八つ裂きの刑を受けるかのようであり、特定政党は支持できず、結局、希望、立憲、無所属に票が分散する流れだ。
一方小池の場当たり選挙は佳境に達しているようである。まるで好き嫌いで公認を決めているかのようだ。例えば、自らの都議会の与党勢力である公明党が立つ9選挙区では候補は立てない。都議会与党を維持したいのであり、ここからも小池自身の立候補はないのだろう。また同期当選で仲のよい自民党の鴨下一郎の地盤東京13区には立てない。民進の野田佳彦、岡田克也、安住淳、江田憲司らの選挙区には立てず、選挙後の連携の可能性を残す。そうかと思うと自民党の下村博文、萩生田光一の選挙区には30代の女性候補をぶつける。落下傘候補による空中戦だ。自民党との象徴的選挙に持ち込む戦略だ。この小池の公認作戦には主義主張に基づく整合性などあらばこそであり、なりふり構わず選挙に勝ちたいという「野望」だけが目立つ。小池の希望は9割くらいが議員バッジ欲しさに「議席」にすがりつく節操のなさをあらわにしている面々だ。小池の言葉も「排除の論理でリベラルは入れない」「民進党の全員受け入れなどさらさらない」と、まるでトランプに絶対勝つ秘策を知っているスペードの女王のように権勢をほしいままにしている。小泉進次郎が「小池さんは出ても出なくても無責任。出たら出たで都政を投げ出して無責任。どっちの無責任を取るかということ」と正論を述べたことがよほど口惜しかったと見えて「キャンキャン言っている」とこき下ろした。
こうして小池には相当な逆風が吹き始めているのだ。さすがの民放のトーク番組も持ち上げてばかりはいなくなった。小池は都知事選や都議選の夢よもう一度とばかりに衆院選に打って出たのであろうが、衆院選で首班指名に誰に投票するかがあいまいなままというのは、政党政治のイロハを知らない。そこには3度目の夢とはほど遠い状況が展開している。こうした中で目立つのは自公の落ち着いた選挙戦だ。野党のようなしっちゃかめっちゃかな対応はなく、雑魚が一匹逃げただけで新党問題で動揺は見られない。5日付けの朝日の調査ですら比例区投票先は自民35%、希望12%で立憲、公明が7%だ。この段階で希望との差が大きく出ているのは、もうこのまま与党側に大失言でもない限り終盤戦に向かうということかも知れない、野党の分裂は自民党に漁夫の利をもたらしているのだ。
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