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2017-09-30 00:00
(連載2)対北朝鮮制裁不発の元凶
田村 秀男
ジャーナリスト
中国銀行など大手国有商業銀行が北朝鮮に協力していることは、米財務省がオバマ政権時代から綿密に調べ上げてきた。国連事務局も実態を把握している。ならば、中国からの対北朝鮮金融ルートを遮断すれば、確実に制裁の実を挙げられる。そのためには、米政府が中国銀行など大手銀行に対し、ドル取引禁止という制裁を加えればよい。世界の基軸通貨ドルを入手できなくなれば、中国の金融機関はたちまち干上がるので、米側の要求に応じざるをえなくなるはずだ。ところが、オバマ前政権はもとより、トランプ政権もまた逡巡している。
トランプ氏は3日付のツィッターで「(中国の対北朝鮮圧力は)ほとんど成果を上げなかった」「北朝鮮とビジネスをする全ての国との貿易停止を検討している」とぶち上げた。北朝鮮とビジネス取引する最大の国とは、もちろん中国のことである。ムニューシン財務長官は大統領の指示を受けて「北朝鮮との取引を望む者は米国と取引できないようにする」と言明し、北朝鮮に協力する中国企業リストを作成中だが、ワシントンの関係筋からは「銀行大手は対象外」と聞く。なぜか。
大手銀行が国際金融市場から締め出されると、中国で信用不安が起きかねず、もとよりバブルにまみれた金融市場が震撼する。習近平政権は激しく反発し、米企業に報復しかねない。アップルなどは中国が最大の市場であり、トランプ政権が6月以来検討中の、通商法301条での対中制裁にも米産業界は困惑している。米企業や消費者も中国からの輸入にかなり依存している。「米経済に打撃を与えることなく中国との貿易を大幅に制限することはほぼ不可能だ」(5日付米ウォールストリート・ジャーナル紙電子版)と専門家はみる。
中国はトランプ政権になって以来、対米輸出と対米黒字増を加速させている。トランプ政権の対中融和路線に便乗して中国は思うがままにドルを稼ぎ、北朝鮮に資金供給できるのだ。今、なすべき経済制裁は中国の対北朝鮮金融ルートを完全に遮断する対中金融制限ではないか。北京が米国だけを逆報復できなくなるよう、日欧も同調すべきだ。(おわり)
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