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2017-09-12 00:00
(連載1)アメリカの政治・金融関係者の日本への見方
鈴木 馨祐
衆議院議員(自由民主党)
9月6日から7日にかけて、アメリカ東海岸(ニューヨーク・ワシントン)において、機関投資家及び下院議員を含む議会関係者、外交・安保の専門家と意見交換しました。実質2日間で一時間程度のミーティングが13という非常にタイトな日程でしたが、各方面と有意義な意見交換が出来ましたので、ここにオープンにできる範囲での所感を書かせていただきたいと思います。まず、投資家の日本への見方ですが、日本経済について、「慎重な楽観」というのが正直な印象です。2013年の安倍総理・黒田総裁就任直後あるいは、2014年のコーポレートガバナンス改革、法人税減税を推し進めた頃の熱気から比較すると寂しいものはありますが、逆に過度な期待も失望も無いという落ち着いた状況といえます。
特に今回は、時期的に北朝鮮情勢、政局、日銀総裁人事に関心が集中していて、政策的にはコーポレートガバナンスの深化や流動性を高める労働市場改革への注目が高い印象を受けました。賃金上昇圧力の欠如、設備投資の弱さ、内部留保の増加など最近の現象を分析する中で、政府、中央銀行の政策というよりも金融緩和や法人税減税を活用しきれない民間企業の動きに問題があり、そこを動かす政策、すなわちコーポレートガバナンス、事業会社の株の持ち合い解消、終身雇用の打破を含む労働市場改革等の改革が必要との声が一致して多かったのが印象的でした。
構造問題、貨幣現象、様々な見方のあるデフレの根本原因ですが、日本においてはむしろ、横並び社会の中で根強い個人と法人の「リスクをとらない」傾向、将来への期待の異常な低さといった、意思決定における心理的な要因にあるとの認識が共有されつつあると個人的には感じたところです。デフレ脱却、持続的な経済の拡大のためには、公需の創出など政府主導の一時的な景気回復ではなく、真に民間のプレーヤーが適切なリスクテイクを行い成長の原動力になり続ける環境が必要です。自民党がこうした民間のマインドの変化を促す構造改革路線に戻れるかどうかがが注目されていますし、同時にこの点こそが、日本への投資の呼び込みや潜在成長率の押上げには不可欠だと思われます。
一方のアメリカ政治の状況ですが、アメリカの格差問題から共感を得ている「アメリカファースト」はかなり根強く、トランプ政権の二期目の可能性が高いとの見方が広まってきているようです。日本としても、そのことを可能性の一つとして前提において、いろいろな対応をしていく必要があります。特に、TPP、パリ協定をはじめとした国際秩序へのアメリカの関与に関して、再びアメリカが将来的に国際社会に戻ってくるのか否かは日本だけではなく、中国・北朝鮮以外のアジアの国にとっては、極めて重要な問題です。正直な印象を言えば、可能性はあるものの、当面は厳しいということだと思われます。我々が日本としてどう対応すべきか、長期的な観点からも再考が必要です。(つづく)
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