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2017-09-08 00:00
対北制裁はトランプ氏の対中強硬策がカギ
田村 秀男
ジャーナリスト
北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受け、国連安全保障理事会は北朝鮮からの石炭、鉄鉱石、海産物などの輸出を全面禁止する制裁案を決議した。中国が応じたから採択できたが、中国の習近平国家主席はトランプ米大統領の期待を裏切り続けてきただけに、中国が実行に移すとはにわかに信じがたい。要は、トランプ政権が対中強硬で振り上げたこぶしを下ろさないことだ。昨年の大統領選挙期間中から対中強硬論をぶってきたトランプ氏は、今年1月に北朝鮮が核実験と弾道ミサイル発射に踏み切るや、対中融和策に転換した。中国なら北朝鮮を押さえ込むことができると踏んだためだ。
トランプ氏は習氏との会談で、中国の対米協力と引き換えに中国への制裁関税適用を先送りした。中国は北からの石炭輸入を停止したが、鉄鉱石などの輸入を増やす一方で、北への製品輸出を拡大する始末だ。高笑いする北の金正恩朝鮮労働党委員長はシカゴまでを射程に入れたICBM開発で成果を挙げた。業を煮やしたトランプ政権は対中強硬路線にUターンしようと、通商法301条による対中制裁の検討を始めた。米国の対北国連制裁決議案に中国が同調したのは、中国側が米国との貿易戦争勃発を恐れたからだ。
だが、中国のやり方はまさに面従腹背、口先と行動が全く違うことはこれまでの対応を見れば明らかだ。北が最も欲しがるのは外貨であり、輸出できなくなると追い込まれるはずだが、中国は大手の中国銀行を含め金融機関が外貨決済に協力している。中国と対北貿易が縮小したところで、海外展開する中国の銀行を経由すれば、第3国経由で制裁逃れして外貨を獲得できる。通商法301条はもちろん、中国の銀行への制裁を取り下げるべきではなかろうが、米側に弱みがある。301条の場合、知的財産権侵害、ハイテク技術の盗用など不公正な貿易慣行を調べ上げ、対中制裁するものだが、肝心の米産業界が逆に中国市場から締め出しを食らうのではないかとおびえているのだ。
中国での売り上げが米国を上回る米アップルの場合、北京の要請に応じて「仮想プライベートネットワーク(VPN)」アプリの提供を停止した。VPNは、ネットの検閲フィルターを迂回(うかい)できるソフトウエアで、アップルは習政権によるネットの締め付けに全面協力した。アップルばかりでなく、他のハイテク企業も市場シェア欲しさに、301条の対中適用を懸念している。もとより対中ビジネス利権に弱い、トランプ政権が対中強硬策に踏み切るかどうかは不透明だ。思い起こすべきは、中国の軍拡は対米貿易黒字なくして不可能なことだ。トランプ政権での対中強硬派の論客は新設された国家通商会議のピーター・ナバロ委員長で、米国の消費者が中国製品を買うことで中国の軍事膨張を支えていると論じている。そのナバロ氏の影は政権発足後ずっと薄いままだ。
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