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2017-08-25 00:00
アメリカ社会の人種差別の深さ
川上 高司
拓殖大学教授
アメリカのヴァージニア州のシャーロットビルで起こった悲劇がトランプ政権だけでなくアメリカ社会に衝撃をもたらした。南北戦争の南軍の英雄とされているリー将軍の銅像を撤去するかどうかで撤去派と反対派が激しく衝突し撤去派に死傷者が出てしまった。この事件に対しヴァージニア州知事は「白人至上主義者はアメリカから出て行け」と厳しい非難を発表した。ペンス副大統領も「白人至上主義者、ネオナチ、KKKを容認するわけにはいかない。アメリカに彼らの居場所はない」と発表した。反対派には白人至上主義者が参加していたため、この暴動が人種差別問題と認識されるようになった。
トランプ大統領も非難のコメントを出したものの、その後に「お互いさまだ」と反対派を擁護するような発言を重ねたため、トランプ大統領が人種差別を容認するのかという非難がわき起こり、アメリカ社会を揺さぶっている。オバマ大統領が就任した8年間、白人は社会の片隅に追いやられているという危機感と不満が一部の白人たちの間にたまっていった。その反動がトランプを大統領に押し上げたのだから、そのパワーは侮れない。トランプとしては自らの支持層を擁護したにすぎないのかもしれない。だがその影響は計り知れない。
トランプ大統領の白人至上主義者を擁護するような発言を受けて、トランプ大統領の「製造業委員会」と「戦略と政策フォーラム」 が解散に追い込まれた。この2つの委員会はアメリカの雇用を増やすための政策を考える委員会でトランプ大統領の肝いりだった。製造業委員会にはインテルをはじめ名だたる企業のCEOが8人ほど参加している。戦略と政策フォーラムには投資顧問会社のブラックストーン、JPモルガンなど金融界大手のCEOが名を連ねている。
しかし、トランプ大統領の問題発言を受けてCEOたちが辞任を次々と表明した。白人至上主義者の大統領の側に立つということは自らもまた人種差別を容認することでありとうていあり得ない、というのがその理由である。経済界を敵に回してしまっては、雇用の創出という公約の実行が頓挫したことは間違いないのである。シャーロットビルの暴動は、人種差別の深さとそれを是正しようとする力がアメリカ社会を動かしていることを改めて思い起こさせた。その敏感な部分に対する感受性をトランプ大統領は持ち合わせているのか、その資質が問われている。
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