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2017-08-22 00:00
習近平氏にだまされたトランプ政権
田村 秀男
ジャーナリスト
トランプ政権内部のゴタゴタを衝くかのように、北朝鮮の金正恩政権が2度目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験を成功させたという。シカゴまで届く性能があり、米本土にとっても北の核ミサイルが切実な脅威になった。北の抑止を中国の習近平国家主席にまかせるトランプ大統領の甘さが露呈したわけだ。対中強硬策に転じるのは当然で、北朝鮮の外貨稼ぎに協力している中国の大手銀行を国際金融から締め出すのがもっとも効果的だ。トランプ氏は決断できるのか。対中金融制裁がなぜ必要か、中国と北朝鮮の貿易動向はそのヒントになる。中朝貿易はほぼ一貫して、中国側の輸出超過である。ここ数年間は半年間の出超額は2~3億ドル止まりだったが、ことし上半期は8億ドル近くに急増している。金額面で北からの最大の輸入品目である石炭を2月から止めた影響による。他方で鉄鉱石などの輸入を増やしているが、石炭の穴埋めにはほど遠い。
慢性的な外貨不足の北朝鮮は対中貿易赤字分を決済するためには、中国の金融機関からの信用供与が必要になる。中国の金融機関の協力なくして、中朝貿易は成立しないわけで、中国側が対北融資を全面停止すれば、北は中国から輸入できなくなり、追い込まれる。トランプ政権は6月末に北との国境に近い丹東市の丹東銀行に対し、北の武器開発に資金面で協力したとし、米銀などを通じたドル取引ができないようにした。中国側の反発を恐れたオバマ前政権がためらった対中金融制裁に踏み込んだのだが、丹東銀行は対北金融コネクションのほんの一部に過ぎない。
米財務省の問題銀行リストには中国を代表する国際金融大手の中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)が入っている。中国銀行は香港、シンガポール、ロンドン、ニューヨークなど世界の主要金融センターに拠点を持ち、中朝貿易のみならず北の武器輸出や購入に関与している。金正恩政権の資金ルートを完全に遮断するために、中国銀行を制裁するべきだと、超党派の米上院議員団は今年2月にトランプ政権に申し入れている。
あとは、トランプ氏の決断次第だが、これまでの彼のツイッターをみれば、いささか心もとない。4月7日の習氏との首脳会談以来、中国への貿易制裁を棚上げしてきた。北が7月4日に最初のICBMをぶっ放したあと、ドイツ・ハンブルクで習氏と会談して「習氏と貿易や北朝鮮で素晴らしい会合を持った」とつぶやいた。7月29日の再度のICBM実験を受けると、さすがに「中国は口先だけで北に対して何もしていない」と批判したが、続けて「中国にとって北朝鮮問題解決はたやすいはずだ」と未練を漂わせる。老獪(ろうかい)な北京は、ウォール街出身者が陣取り、実利に弱いトランプ政権の足下を見透かしている。特定の米大手金融機関に対して市場利権を供与して揺さぶる。安倍晋三首相は「中国にだまされるな」とトランプ氏にアドバイスすべきだ。
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