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2017-08-04 00:00
法人税収減で消費増税は自滅策
田村 秀男
ジャーナリスト
企業利益が増えれば法人税収が増えるはずだが2年連続で減収だ。これを見て、企業利益と連動する国内総生産(GDP)が成長しても税収は増えないとし、一部メディアは緊縮財政や消費税増税を正当化しようと勢いづくが、日本経済の自滅策だ。金融・保険業を含む全産業の経常利益合計額と法人税収の推移を追ってみる。経常利益は2008年9月のリーマン・ショック後、回復過程に入り、アベノミクスが本格的に始まった13年度から増勢に弾みがついた。16年度の経常利益総額は88兆円で09年度の2・3倍に上る。
それに比べ、一般会計の法人税収は62%増にとどまる。法人税収は15、16年度連続で前年比減収だが、経常利益は増え続けている。経常利益に対する法人税収の比率をみると、アベノミクス開始後急減し、16年度は11・8%(10年度は17・7%)にまで落ち込んだ。企業(金融機関を含む)は儲けても税を少なく払っている。巨額の収益を上げながら、税をほとんど払わない企業は日本企業としての義務をないがしろにしていると非難されてしかるべきだが、それを可能にしているのは法人税制である。多国籍化している大企業は海外法人からの配当収入への課税を最小限に抑えられる。海外子会社は現地で納税すれば日本からの課税を免れるので、税率の低い海外に利益を集中させる。
米国も欧州も、法人税を引き下げて、本国企業を国内に引き止め、外国企業を引きつけようと競っている。安倍晋三政権も法人税率を引き下げて、企業の対外シフトを食い止めようとする。その結果が法人税減収である。法人税率を上げれば、企業はますます国内にそっぽを向くようになるので、税収は減るし、国内経済は停滞しかねない。日本経団連など経済団体はさらなる法人税減税と消費税増税を求める。消費税収は景気に左右されにくいので、財務省も与党議員の多くも消費税増税に執着し、法人税減税とのバーターを考える。企業は税負担を軽くして、税引き後利益を増やしたい。しかし、企業はあふれる利益を「利益準備金」としてため込むだけで、設備投資や賃金・雇用に投入しないと、国内経済は停滞する。
日本企業平均では14年以来、経常利益のうち6割前後しか設備投資に回していない。バブル崩壊不況の1990年代後半でも経常利益の1・5倍以上を設備投資に回していた。アベノミクスのおかげで企業は利益を増やしてきたが、企業は税、投資、雇用で国民経済に貢献してきたとは言い難い。20年デフレの間に企業の血気が失せたのだ。正解は明白だ。国内投資や雇用に積極的に資金を投入する企業を減税で支援する。政府は併せて、今後の成長分野の基礎研究、人材教育に資金を投入する。民間で眠る巨額の余剰資金を国債発行で吸収すればよい。内需拡大に向け消費税減税を検討すべきで、増税どころではない。
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