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2017-07-28 00:00
”慰安婦強制連行”の発想の起源は大陸にあり
倉西 雅子
政治学者
韓国の文在寅大統領は、先日、「国政運営5カ年計画」を発表しましたが、特に日本国において注目されるのは、2018年に予定されている“慰安婦被害者を讃える日”の制定です。関連事業として研究所や歴史館の建設にも言及されていますが、この問題がフェークニューズから発しているだけに、その実現性には疑問があります。ところで、最近、モンゴル帝国建設の基礎を築いたチンギス・カーンの一代記でもある『元朝秘史』を読んだのですが、この書は、モンゴルのみならず、ユーラシア大陸の遊牧民の発想を知る上でも貴重な資料となります。漢訳史書としての成立は明代の永楽帝の治世ですが(1408年)、同時代を生きたチンギス家の縁者による筆とも推測されてます。
その『元朝秘史』で驚かされるのは、“皆殺し”や掠奪をも是とする征服の凄惨さのみならず、他部族や他民族の女性や子供に対する扱いです。基本的発想としては女性も子供もの戦利品であり、“もの”に過ぎません。征服の度に、打ち負かした相手の女性達、特に容姿の優れた若い女性達を連行し、論功行賞として部下達に分け与えたのですから。そこでは、女性の人格や尊厳に対する尊重はひとかけらもなく、勝った側の当然の“権利”と見なされています。一方、日本国の歴史を振り返りますと、既に3世紀から4世紀頃とされる神功皇后の事績として軍規の制定が記されており(『日本書紀』)、戦地に赴く兵士達に対して、女性への暴行を固く禁じています。また、16世紀の戦国時代にあっても、落城に際しては、敵方であっても女性と子供だけは城外から逃れて落ち延びるのを許す慣行がありました(このため、男性の武将が女装して城から逃げ出す事例もあった…)。ユーラシア大陸の遊牧民とは正反対の発想であり、女性や子供が危険に晒される戦時にあってこそ、これらの弱き人々を保護しようとしたのです。
こうした発想の根本的な違いに注目しますと、先の大戦にあって、日本軍が朝鮮半島において若き女性達を大量に強制連行し、戦場において慰安婦を強要したとは考えられません。否、朝鮮半島が第四代モンケ・カーンの時代に征服され(1254~59年)、高麗王朝がモンゴルの支配下に置かれたことを想起しますと、モンゴル的発想は、朝鮮半島にこそ残されていたと推測されます。女性は、勝った側の処分自由な戦利品という…。
韓国では、親北派の文大統領の就任により、慰安婦問題に関しても対日糾弾のボルテージを上げています。しかしながら、日本国による韓国併合時代を更に過去に向かって朝鮮半島の歴史を遡りますと、慰安婦問題発生の遠因は、モンゴルによる征服に求めることができるかもしれません。戦前にあって日本軍が朝鮮女性達を強制連行したというのは思い込みであり、韓国側が自らの歴史を投影させた発想で創り出した幻想にすぎないのではないでしょうか。このように考えますと、この問題の解決には、まずは韓国自身が精神史を含めて自らの歴史を真摯に見つめ直す必要があるのではないかと思うのです。
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