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2017-07-24 00:00
「08憲章」は劉暁波氏の中国国民への遺言か
倉西 雅子
政治学者
天安門事件後の当局による厳しい弾圧化にあって、なおも中国国内に留まり、祖国の民主化に努めた劉暁波氏。危篤状態が報じられる中、回復の願いもむなしく、7月13日に身罷られました。民主化・自由化のために闘いつづけた劉暁波の御霊に、心より哀悼の意を捧げたいと思います。
天安門事件から28年の歳月が流れた今日、中国国内では、劉暁波氏の名前さえ知らない若者も多いと聞きます。劉氏の名を知る者でも口をつぐみ、尋ねられても多くを語らないのです。この現象は、中国当局による弾圧の徹底ぶりを示しており、劉氏の病状や死についても国内では一切報じられることはなく、海外放送もブラックアウトされたそうです。中国としては、劉氏の生きた痕跡さえ完全にこの世から消し去りたいのでしょう。
古今東西を問わず、革命や政権打倒を訴えたリーダー達は、その中心人物の死を以って潰されてしまう場合が少なくありません。劉氏の死について暗殺説が信憑性を持つのも、ノーベル平和賞を受賞した劉氏が民主化運動の象徴的な存在であったからに他なりません。それでは、中国の民主主義と自由は、劉氏と共に当局によって棺に納められ、墓場に葬られてしまったのでしょうか。二度と蘇らないように封印されて。
劉氏が、純粋な活動家型リーダーであったならば、牽引者が失われるのですから、その死は、民主化運動に決定的な打撃を与えたことでしょう。しかしながら、劉氏は理論家でもあり、文筆家でもありました。そして、その成果は、中国の体制移行の道標ともなる「08憲章(零八憲章)」として結実しているのです。インターネットが発展した今日、同憲章は世界各国において翻訳され、誰もが読むことができます。厳格な情報統制下にあるとはいえ、中国国民も、海外経由であれ、何れかの方法で接することはできるはずです。「08憲章」こそ、劉暁波氏の中国国民への遺言であり、死してなおもその理念は中国国民に語りかけ、生き続けてゆくのではないかと思うのです。中国に民主主義と自由が訪れるその日まで。
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