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2007-02-20 00:00
北東アジア経済開発協力の夜明けか?
山澤 逸平
一橋大学名誉教授
6カ国協議がようやく全体合意に漕ぎ着けた。重油100万トン分の援助と引き換えに北朝鮮が非核化するというものである。非核化が誠実に履行されれば、これまで氷付けにされてきた北東アジアの雪解けが始まる。もっとも日本ではなお警戒感が強い。拉致問題は日朝2国間協議に残されて、解決の見通しがついていないからである。日本では経済制裁で圧力をかけなければ北朝鮮が拉致問題の解決に応じることはあるまいと考えている人が多い。しかし今度合意した中・韓・露・米の4カ国はそう考えていない。これまで日本と同調してきた米国ブッシュ政権も、舵取りを切り替えた。
ここでいう北東アジアとは中国東北3省、日本、韓国、北朝鮮、モンゴル、極東ロシアの6カ国・地域を主対象としている。これらの国・地域は天然資源や人的資源の賦存が大きく異なり、相互に補完的で、国際分業の大きな利益が見込まれる。しかし政治・経済体制が異なっていたことから、発展協力に取り組めず、国際分業は大きく制約されてきた。近年東アジア共同体構想が活発に動き出しているが、北東アジアは東アジアに含まれながら、この動きから取り残され、経済発展も遅れている。
安倍首相は日本をアジア・ゲートウェイと位置づけるが、どうも東・東南アジアを意味しているようだ。他方、日本海沿岸の諸都市は日本海の対岸の北東アジアへ期待を抱いてきた。北前船の活躍に続き、20世紀のはじめには鰯や大豆の油や搾りかす肥料が活発にやり取りされた豊穣の海だったのだ。そのひとつ、新潟県の環日本海経済研究所(ERINA)はすでに15年以上も北東アジア経済会議を主催し、北朝鮮を除く5カ国・地域の参加を得て、北東アジア経済協力を議論してきた。2月はじめに新潟市で開かれた北東アジア経済発展国際会議に参加して得た実感は、6カ国協議の合意の直前だったが、まさに「北東アジア経済開発協力の夜明けか」だった。
日本にいると北東アジアは凍り付いていると思う。もっとも過去数年間の中露東部国境紛争の解決や、朝鮮半島の南北会談、日露国交正常化への試み、日韓自由貿易協定交渉、日朝平壌宣言等、政治・安全保障上の緊張を緩和する動きが見られ、他方この地域の中核に位置する中国東北3省のダイナミックな発展が牽引して韓・日・露も巻き込んだ経済活発化が現れてきた。中国の東北振興政策、韓国の北東アジア・ビジネスハブ構想、つい先月プーチン大統領が立ち上げた極東ロシア発展特別委員会等、各国は北東アジア開発への期待を打ち出している。
中国、ロシア、北朝鮮、韓国の間ではそれぞれ2国間の国境貿易協定が結ばれて、国境貿易が活発化しており、中・露、中・北朝鮮、南北朝鮮間では特別加工区を設けて、直接投資を受け入れている。今やこれらの2国間協力を結びつけて、地域大の共通の貿易・投資制度が構築される必要がある。輸送、エネルギー、環境、観光、図們江開発等、主要分野での具体的な協力構想が議論されている。日本もそろそろ中央政府の出番ではないか。今回の合意が本当の夜明けになることを祈っている。
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