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2017-07-05 00:00
南北融和は「絵に描いた餅」
田村 秀男
ジャーナリスト
先日、韓国・済州島では中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の第2回年次総会が開かれた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が就任後に初めて出席する国際会議で、文大統領は「アジア大陸の極東側の終着駅に韓半島(朝鮮半島)がある。南と北が鉄道でつながる時、新たな陸上・海上シルクロードが完成するだろう」と、ぶち上げた。ユーラシア大陸と、それを取り巻く海洋の両インフラを整備する中国の習近平国家主席の「一帯一路」構想に便乗し、南北朝鮮の融和を図る意図をあらわにしたわけだが、筆者の目から見れば「絵に描いた餅」にしかすぎない。何よりも必要なカネがAIIB元締めの中国にない上に、韓国自身、外貨不安を抱えており、資金分担どころではないからだ。
韓国の外貨準備と韓国企業株など外国の対韓証券保有(韓国にとっての対外証券負債)の推移を追ってみた。韓国は流入する外貨を通貨当局が買い上げて外貨準備を積み上げる。2000年代初めからは韓国株式市場への海外からの投資が主要な外貨流入減になっている。08年9月のリーマン・ショック時には、外資が対韓証券投資を一斉に引き上げたために、外貨の大流出が起きた。幸い、混乱は短期間で収束し、その後は再び外からの証券投資が増え、外準の増勢基調を維持している。外国の証券保有の外準に対する割合は今年3月末で1・8倍以上にのぼる。リーマン時のように外資が突如、証券の売却に転じると、外貨準備が干上がる不安が生じる。
危機は北朝鮮ファクターばかりではない。何よりも、外資への依存度が高い韓国市場は国際金融不安に弱い。韓国の対中輸出は国内総生産(GDP)の1割を超え、中国の景気変動の影響を強く受ける。14年のユーロ不安の際には、ドル不足に陥った米欧金融機関が韓国資産の売却に動いた。頼みは、日本との通貨スワップだが、日韓スワップ協定は期限切れになったままで、再開のメドが立っていない。AIIBは世界一の外準を保有する中国が胴元だから大丈夫とはならない。中国自体、海外からの投機マネーを当局が買い上げて外準を水増ししている。投機資金を含む中国の対外負債は外準の1・5倍以上で、韓国と同様、いつ外準が底を突くかわからない。
英国、ドイツなど欧州主要国もAIIBに参加しているが、いずれも金融やインフラ受注の機会狙いで、自身は資金提供するつもりは全くないようだ。インドもロシアも主要メンバーだが、外貨不足に悩まされている。世界最大の対外債権国日本とドル発行国米国が参加しないこともあって、AIIBは国際金融市場で信用ゼロ、外貨調達は不可能だ。AIIBは発足して1年半以上経っても、「金欠銀行」のままだ。韓国は中国に貢ぐ。済州島総会で、年内にもAIIB事業準備特別基金として800万ドル(約8億8700万円)拠出を約束したが、いかにも変な数字である。
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