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2017-06-30 00:00
AIIBの正体はアジアインフラ模造銀行
田村 秀男
ジャーナリスト
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の正体はアジアインフラ模倣(Imitation)銀行である。北京は加盟国・地域数でアジア開発銀行(ADB)を上回ると喧伝するのだが、自力でドル資金を調達、融資できず、ADBや世界銀行のプロジェクトの背に乗って銀行を装っている。元締・中国の外貨準備は減り続け、対外借金がなければ底をつく。ドル本位のAIIBに限界を見て取った習近平政権はユーラシアのインフラ整備構想「一帯一路」の決済通貨を人民元にしようともくろむ。
韓国・済州島でのAIIB第2回年次総会会場では韓国企業などが最先端の情報技術(IT)インフラ設備の売り込みを競っているが、AIIB目当てでは「とらぬたぬきの皮算用」同然だ。ドル建て金融のAIIBの信用の源泉は元締・中国の外貨準備で、残高は3兆ドル余りだが、帳簿上だけだ。海外からの対中投資や融資は中国にとって負債だが、当局はその外貨を強制的に買い上げて、貿易黒字分と合わせて外準に組み込む。外貨の大半が民間の手元にある日本など先進国とは仕組みが違う。外準は3年前をピークに急減している。対照的に負債は急増し、昨年末には外準の1・5倍以上だ。外国の投資家や企業が中国から資金を一斉に引き揚げると、外準は底をつくだろう。
中国外準を見せ金にして昨年初めに開業したAIIBには世界最大の債権国日本とドルの本家米国が参加を見送った。当然のように国際金融市場はそっぽを向く。米欧の信用格付け機関はAIIBの格付けを拒否するので、AIIBはドル建て債券発行ができない。AIIBはやむなくADBや世銀との協調融資で当座をしのぐ。5月末時点の融資額は授権資本金1千億ドル(約11兆1千億円)に対し21億ドル余りにすぎない。加盟国の多くは割にあわないことを恐れ、当初約束した出資金の払い込みを渋る。
習近平国家主席は5月中旬、北京で開いた一帯一路の国際会議で、人民元資金、7800億元(約12兆8千億円)をインフラ整備用にポンと出すと表明した。国際通貨としての信用力が貧弱な人民元でも不自由しない企業は中国の国有企業に限られるので、韓国や欧米企業は受注で二の足を踏むだろう。借り手国は人民元の返済原資確保のために、対中貿易に縛りつけられる。AIIBに見切りをつけた習政権は中国による中国企業のためのプロジェクトを周辺国に押し付けるだろう。
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