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2017-06-28 00:00
「抵抗勢力官僚」は獅子身中の虫だ
杉浦 正章
政治評論家
満を持していたのであろう。ようやく反転攻勢が始まった。官房長官・菅義偉が6月27日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関し、日本獣医師会、農林水産省、文部科学省を名指しして「抵抗勢力」と断定、岩盤規制を突破する方針を改めて鮮明にさせた。首相・安倍晋三も「加計」を突破口に獣医学部の全国展開を進める方針を明言。これまで沈黙していた国家戦略特区での獣医学部新設決定に関わった諮問会議の民間議員らも「加計問題の根底に日本獣医師会の強い抵抗があった結果一校に絞らざるを得なかった」ことを暴露、いかに岩盤を突き崩すことが困難であったかを強調した。まさに事態は政府・与党が「改革派」で、民新・共産両党と朝日、毎日、民放など反政権メディアが「守旧派」となる構図だ。かくなる上は安倍はちゅうちょすることはない。政権の方針に反対する文科、農水などの幹部官僚を人事で押さえ込むべきだ。堰を切ったように岩盤規制突破の発言が相次いでいる。「抵抗勢力」を名指しした管の発言は「そもそも52年間、獣医学部が設置されなかった。日本獣医師会、農林水産省、文部科学省も大反対してきたからではないか。まさに抵抗勢力だ。規制がこれだけ維持されてきたことが問題だ」というものだ。
そのうえで菅は「安倍政権とすれば、まず1校認定したわけであり、突破口として全国に広げていくのは獣医学部だけでなく、すべての分野において行っていく方針だ」と述べ、国家戦略特区で認めた規制緩和策の全国展開を目指す考えを強調した。安倍も「今治市に限定する必要はない。全国展開を目指す。意欲あるところはどんどん獣医師学部の新設を認める」と明言した。また諮問会議の民間議員を務める大阪大学名誉教授八田達夫は「獣医学部の規制は既得権による岩盤規制の見本のようなものであり、どこかでやらなければいけないと思っていた。『1つやればあとはいくつもできる』というのが特区の原理で、1校目は非常に早くできることが必要だった」と強調。東洋大学教授竹中平蔵は、文部科学省前事務次官前川喜平が先の記者会見で「行政がゆがめられた」などと述べたことについて、「最初から最後まで極めて違和感がある。今回の決定プロセスには1点の曇りもない」と反論した。加えて、竹中は「『行政がゆがめられた』と言っているが、『あなたたちが52年間も獣医学部の設置申請さえも認めず、行政をゆがめてきたのでしょう』と言いたい。それを国家戦略特区という枠組みで正したのだ。2016年3月までに結論を出すと約束したのに約束を果たさず、『早くしろ』と申し上げたことを『圧力だ』というのは違う」と切り返した。
こうした発言が一致して指摘するのは獣医師会のごり押しだ。今治市だけに学部新設を限定しようと躍起になっていた姿が鮮明になっている。確かに獣医師はペットブームで笑いが止まらない状況にあるといわれる。マスコミは伝えていないが、法外な治療費を請求される被害が続出しており、社会問題となっている。獣医師会が既得権にしがみつくのは、言うまでもなく“甘い汁”を囲い込み、拡散するのを防ぎたいからにほかならない。岩盤規制の突破はその意味からも必要不可欠であり、政府はこの辺のPRが不足している。政権が改革を推進しようという時に、一部マスコミには何でも政局に結びつけようとする姿勢が見られる。朝日は28日付朝刊の社説で安倍が「地域に関係なく2校でも3校でも意欲のあるところはどんどん認めていく」と発言したことにかみついている。「(親友が経営する加計学園を優遇したという)疑惑から目をそらしたい安直な発想といらだちが透けてみえる」と、もっともらしい論旨を展開している。しかし、自民党副総裁・高村正彦ではないが、これこそ「ゲスの勘ぐり」社説だ。岩盤規制の突破という、今の日本に喫緊に必要な問題への視点と大局観がゼロだ。朝日は52年間も岩盤を死守し、天下り先を確保してきた文科官僚を礼賛していいのか。
管は抵抗勢力として獣医師会、文科省、農水省の名を挙げたが、こうしたマスコミが存在する以上、一部マスコミも含まれるのは当然だろう。最近では米国のトランプ政権も抵抗勢力との戦いを繰り広げている。同政権にとっても抵抗勢力の排除は政権基盤確立の基礎であり、人事が遅れているのは、官僚が敵か味方かを見定めている結果であろう。大統領上級顧問スティーブン・バノンが、米主要メディアに対して「メディアは抵抗勢力だ。黙っていろ!」とかみついたのは記憶に新しい。また、小泉純一郎も自らが進める「聖域なき構造改革」に反対する諸勢力を「自民党内の族議員、公務員、郵政関連団体、野党、マスメディア」などに絞って、郵政改革を成し遂げた。
安倍政権が改革の旗を高く掲げればかかげるほど、風圧に対処する政治手法が必要になっていることは言を待たない。安倍は通常国会中は加計問題に関してどちらかと言えばあいまいな対応をとってきたが、これはテロ準備法成立の必要という喫緊の重要課題の処理を意識したものであろう。その結果、文科省内部からの漏洩事件が頻発し、買春疑惑の前次官が我が物顔で政権の足を引っ張るという“弛緩(ちかん)”が生じていた。政権の前途には外交・安保問題、経済対策など重要課題がひしめいており、野党の要求する臨時国会などは当面開催する必要はあるまい。閉会中審査なども無視して当然だ。しかし、左傾化民放の口から生まれたような低級コメンテーターらに言いたい放題の発言を繰り返させておくことはない。管でも高村でも竹中でも論客を繰り出して、テレビで直接岩盤規制の突破を訴える必要があるのではないか。また文科、農水両省などに対して幹部人事も断行して、引き締めを図る必要もあるのは当然だ。世界中の政権は獅子身中の虫を取り除くのが常識なのだ。
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