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2017-06-22 00:00
アフガニスタンの対応からみる大統領の責任放棄
川上 高司
拓殖大学教授
6月15日、アメリカはアフガニスタンに4000人を増派するというニュースが流れた。前政権がアフガニスタンからの撤退を遂行し、現在は米軍8500人、NATOから5000人がアフガニスタン軍の養成任務に従事しているにすぎない。そこへ大規模な増派をするということは、アメリカが再びアフガニスタンに関与を深めるということを意味する。このニュースがアメリカだけでなくNATO諸国をも驚かせたことは明らかである。
発端は6月14日の上院軍事委員会でのマティス国防長官の発言だった。マティス国防長官は「アフガニスタンで我が国は勝ちを取ることができないでる。増派が必要だがその規模についてはトランプ大統領から一任されており、決定については大統領の承認は不要だと言われた」この発言を受けてメディアがニュースを流したようだが、16日マティス国防長官は「増派の規模は決まっていない」と改めてコメントを出した。ダンフォード統合参謀本部議長は「規模はNATO次第だ。アメリカが増派をすればNATOも続くだろう。実際イギリスは増派を検討に入った」とコメントし、3000~5000人の間になるだろうと発表した。また、アフガニスタンでの任務の変更もありうると含みを持たせた。現在の非戦闘任務だけでなく戦闘任務を再開する可能性が生じた。
そうなれば、再びアメリカはアフガニスタンでタリバンとの闘いに挑むことになる。アフガニスタンへの関与はすでに16年。さらに泥沼に自ら飛び込むトランプ政権の意図が見えない。そもそも増派という重要な事項を最高司令官であるトランプ大統領が国防長官に一任してしまったことに問題はないのか。オバマ大統領は2009年の着任以来、数ヶ月かけてアフガニスタン戦略を閣僚たちと協議し、増派と撤退のスケジュールを決めた。数千人の兵士の命がかかっているのである。アメリカの命運もかかってた。最高司令官としてその政策決定過程を踏むのは当然だろう。
しかしトランプ大統領は議論を尽くすことなくいち閣僚に丸投げし、増派の規模という重要な事項も勝手に決めていいとしてしまった。アフガニスタン戦略はアメリカだけでなく同盟国であるNATO諸国にも影響を与える重要な政策である。トランプ大統領が最高司令官としての責務を放棄しているとしたら、これからのアメリカ安全保障政策はどこへ向かうのだろうか。
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