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2017-06-13 00:00
日本学術会議の「軍事的安全保障研究禁止」は現在も妥当か
加藤 成一
元弁護士
日本の科学者の代表機関である日本学術会議が、今年3月24日の幹事会で、従来からの「軍事的安全保障研究禁止」の方針を継承する旨の声明を行ったことを受けて、全国の大学では、左翼系学者らによる、いわゆる「軍学共同反対」運動や抗議活動が活発化している。日本学術会議幹事会の声明や、左翼系学者らによる反対運動によって、国の防衛関連技術のみならず、防衛関連技術に転用可能な民生技術についても、研究開発への教員の応募を禁止する大学が相次いでおり、このため、これらの研究開発に従事する研究者は減少している。
とりわけ、左翼系学者らが行う「軍学共同反対」は、他国による弾道ミサイル攻撃から日本国民の命を守るための、「ミサイル防衛」の性能向上のための研究開発についても反対している。「飛んでくるピストルの弾をピストルで撃ち落とすことは不可能である」と主張して、その迎撃能力や抑止力を否定する左翼系学者も多い。しかし、中国やロシアが、韓国に配備された高高度防衛ミサイル「THAAD」に強く反対するのは、核戦力の無力化を恐れるためとされており、一定の迎撃能力を有することは否定できない。米国がポーランドなど旧東欧諸国への配備を目指す「ミサイル防衛」につき、ロシアが強く反対するのも核戦力の無力化を恐れるからであると言われている。
左翼系学者らの主張には、日本は憲法9条により戦力を持たず、戦争を放棄したのであるから、「丸腰の非武装」によってこそ平和がもたらされるという、旧日本社会党の観念的な「非武装平和主義」ないし「空想的平和主義」のイデオロギーが、いまだに根強く残っている。彼らは、自衛隊は憲法違反と考えており、戦後の平和は、自衛隊や日米同盟によってではなく、「憲法9条によって守られてきた」と主張している。従って、防衛関連技術の研究開発の禁止を求め、国の安全保障は専ら「外交」によって行うべきであると主張し、自衛隊による「自衛力」の必要性を認めず、「備えあれば憂いなし」との考え方をとらない。
しかし、日本が米国に追随すれば米国より先に日本全土を焦土にすると恫喝し、核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮による差し迫った脅威を考えれば、日本は米国の高性能レーダーシステムと連携して、少なくとも、弾道ミサイル攻撃から国民の命を守るための「ミサイル防衛」の強化は喫緊の課題であると言えよう。軍事的攻撃の形態が、戦車や大砲の時代から、極めて短時間に着弾する大量破壊兵器である弾道ミサイル攻撃の時代に様変わりした現在において、国民の命を守る「ミサイル防衛」の性能向上のための研究開発についてすら、いまだに「軍事的安全保障研究禁止」を理由として反対する日本学術会議幹事会の声明や、反対を煽る一部の左翼系学者らによる『軍学共同反対』運動は、日本の防衛技術水準全般の低下を招き、国民の命を守るべき日本の安全保障を弱体化する由々しき問題であると言えよう。
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