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2017-06-09 00:00
北朝鮮の核・ミサイル、圧力かけるべきは習主席
田村 秀男
ジャーナリスト
「北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、ずいぶんと隣国、中国に無礼を働くもんだ。だが、中国はしっかりやってるぜ」(トランプ米大統領の5月29日付ツイッター)。北朝鮮は先週末、イタリア・シチリア島で開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)での核・弾道ミサイル開発放棄要求を完全無視したばかりか、日本の排他的経済水域に着弾した29日の3発目までに3週間連続でミサイルをぶっ放した。対するトランプ氏は、1日で何度も短文で済むツイッターを乱発するから、米大統領の言葉としては重厚さに欠けるが、中国の習近平国家主席・党総書記への気配りは本物のようだ。
トランプ氏は大統領当選後、しばらくは対中強硬路線を誇示してきたが、今年1月に北朝鮮が核実験と弾道ミサイル発射に踏み切った途端に、対中融和に切り替えた。4月初旬の米中首脳会談後は習氏について機会あるごとに「ウマが合う」「よい男だ」と褒めちぎる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長を抑えるのは習氏しかいないと信じきっているかのようだ。では、中国はトランプ氏の期待に応えているのか。中国が3月から輸入を停止した石炭は大きく落ち込んでいる。対照的に鉄鉱石輸入は急増している。北朝鮮は中国から石油、鉄鋼製品などの供給を受け、見返りに石炭、鉄鉱石などの資源を中国に輸出する。
このバーター方式だと、北朝鮮は対中輸出を減らすと、輸入をその分減らさざるをえなくなる。中でも、石炭は中国の対北輸入総額の5割前後を占める。それが止まった分の穴埋めは容易ではなく、北朝鮮は追い込まれるはずなのだが、中国は鉄鉱石など他の品目の輸入を増やす配慮を行っている。中国の北朝鮮からの輸入総額は今年1~4月で前年同期比20%減少したのと対照的に、輸出総額は15%増加している。何のことはない、中国は石炭輸入を停止することで、トランプ大統領には対北締めつけで協力しているように見せかけながら、北朝鮮に対しては石油、鉄鉱製品などを従来にも増して輸出している。
金委員長が高笑いしながら、弾道ミサイル実験を繰り返すはずである。金委員長に圧力をかけるサミット宣言の裏では、G7首脳は中国にしてやられている。トランプ大統領とG7が圧力をかけるべき相手は中国であり、習主席である。中国に対しては、北への石油供給や、中国の銀行による信用供与の停止を求めるべきだ。そうすると、北朝鮮は輸入できなくなるし、軍は機能停止する。中国がそうしないのは、金委員長が激怒し、核やミサイルを中国の方に向けかねないからだ、との見方があるが、忖度しすぎだ。そもそも、習氏にはそんな気はさらさらない。
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