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2017-06-05 00:00
世界を揺るがす米国の外交政策転換
川上 高司
拓殖大学教授
アメリカでは大統領が交代することに内政も外交も大きく転換する。それが停滞しがちな政治に新しいインパクトを与え活性化する。この4年なし8年ごとの衝撃が、アメリカがパワーを維持する源のひとつと言える。しかし世界がグローバル化し各国が複雑に絡み合っている現在では、その衝撃は他人事ではなくなる。特に今回のトランプ大統領のように、「前政権の否定」がその源である場合は各国が衝撃を受けている。オバマ大統領はイランとは1979年以来の国交断絶の関係を改善し宥和外交路線を敷いた。その反面、長年の盟友国であったサウジアラビアやイスラエルとは関係が悪化していた。
トランプ大統領はそのオバマ外交をあっさり覆した。イランとの核の合意を見直すと表明したためヨーロッパやイラン自身をも困惑させた。一方で関係の改善に喜んでいるのがイスラエルとサウジアラビアである。サウジアラビアとは原油価格の消耗戦までも展開したが、それも今は昔の話である。トランプ大統領はサウジアラビアを公式訪問し強い絆を再構築する姿勢を見せた。まずアメリカはサウジアラビアにブラックホーク150機、60億ドル分の武器の売却を決めた。オバマ時代には米議会がサウジアラビアへの武器輸出に歯止めをかけていたが、トランプは全く意に介していない。また150億ドルのさまざまな支援をアメリカは決めた。そのうちの70億ドルはGEが請け負う。GEは発電所から医療保険制度までサウジアラビアに協力することになる。
ではサウジアラビアがアメリカにもたらすものは何か。1兆ドルにものぼるアメリカのインフラ整備への投資である。アメリカのインフラは老朽化して危機的状況にある。その整備にサウジアラビアの政府系ファンドらが投資していこうというのである。サウジの政府系ファンドが200億ドルを出資するのを筆頭に、投資会社のブラック・ストーンが200億ドルを投資するという。
サウジアラビアにとってはアメリカとの関係の改善は願ってもないことであり、イランの台頭をたたくことができる。またシリア内戦でもスンニ派が有利な展開に導くことも可能となった。折しもイランでは総選挙が行われ穏健派のロハニ氏が再選された。イランはアメリカとの不和を望んではいない。イランにとって再び受難の時代になるのかもしれない。
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