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2007-02-12 00:00
アジア通貨基金(AMF)の可能性について考える
村上正泰
日本国際フォーラム研究主幹
10年前のアジア通貨危機を契機としてアジア地域の連帯感が形成され、とりわけ金融協力の分野で具体的な取り組みが積極的に進められてきた。当時我が国が提起したアイディアのひとつにアジア通貨基金(AMF)構想がある。これは、域内参加国が拠出する資金をプールして、一時的な外貨不足に対処するための新たな相互支援の基金を作るというものである。当時財務官であった榊原英資氏がさまざまなエピソードを交えながら振り返っている(『日本と世界が震えた日』)ように、この構想は米国と中国からの強硬な反対を受けて結局頓挫したが、そもそも「性急すぎるプラン」であったことも事実であろう。その後、AMF構想は表舞台から消え去り、代わりに二国間通貨スワップ取極のネットワークの確立を内容とする「チェンマイ・イニシアティブ」(CMI)が進められてきた。
CMIはこれまでさまざまな進展を遂げてきており、スワップ金額の規模は昨年末時点で合計790億ドルにまで拡大している。このように次第に大規模なものになってくると、効率的で効果的な機能を果たすためには、更なる前進がどうしても不可欠となってくる。たとえば、危機時の迅速な発動のためには、現状で16本ある二国間のスワップ取極を一本化すべきではないかということになる。また、CMIを円滑に機能させるためには、日常的なサーベイランスの更なる強化も必要となる。そして、サーベイランスの枠組みが確立されるならば、CMIによる資金供与の90%をIMFの支援と明示的にリンクさせるという仕組みの見直しも必然的に視野に入ってこよう。さらに、CMIにおけるスワップ取極に実体を持たせ、マーケットの信任を得るためには、外貨準備のプールを否定する理由もなくなってくる。こうした方向でCMIの一層の充実が進んでいくならば、それはもはやAMF構想が実現したことに他ならなくなる。
もちろん一気にそこまで進むものではないし、サーベイランスの機関やプールした外貨準備を管理する機関を設立しようとすれば、具体的な制度設計についてさまざまな意見が続出するであろう。しかしながら、CMIという形でスタートした枠組みは、機能を強化させていくうちにその必然的な帰結として、当初成し得なかったAMF構想を実質的に実現させる可能性を兼ね備えているのである。
このことは、地域協力の進めるうえで大きな示唆を与えてくれる。「共同体」と呼ぶかどうかは別としても、地域統合なり地域協力について、しばしば壮大な構想が語られることがあり、それはそれとして必要なことではあるけれども、実現できない夢物語ばかりを語っても仕方ないのであって、何から手をつけることができるかを具体的に見極める必要がある。そして、それは壮大な構想へとつなげていくうえでの端緒となるような path-breaking なものであるべきであろう。CMIはそうしたものとなる可能性を有しており、AMFへの道筋を切り拓きつつあると言える。
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