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2017-04-25 00:00
米の対中通商政策は日本に恩恵
田村 秀男
ジャーナリスト
米フロリダ州で開かれた米中首脳会談で、トランプ政権は実効ある市場開放に習近平政権を追い込んだ。仕掛けは米国の対中貿易赤字削減のための「100日計画」策定合意で、オバマ前政権までの政経分離路線と決別し、貿易と軍事・外交をリンケージさせる新次元の通商政策に踏み出す。18日から始まった日米経済対話への波及を警戒する向きもあったが、日本にとっても世界にとっても中国の重商主義封じ込めの恩恵は大きいはずだ。
トランプ政権は習近平国家主席訪米に備え、貿易を軍事、外交と関連付け、相手国と厳しい交渉を行う戦略を練ってきた。3月末に打ち出した大統領令「著しい貿易赤字に関する包括的報告」もその表れで、大統領令の冒頭で「自由かつ公正な貿易は国家の繁栄、安全保障及び外交に不可欠だ」と強調している。その2日後にトランプ氏は、英フィナンシャル・タイムズ紙との会見で、中国が対米協力しない場合には北朝鮮に単独攻撃を辞さない構えを示した。4月6日の夕食会終了間際にシリアへのミサイル攻撃を習氏に告げた。米高官が認めるようにシリア攻撃は北朝鮮への警告だ。
リンケージ路線からすれば、中国が対北朝鮮の押さえ込みに協力しない場合、貿易、為替面でもより一段と強硬な対抗策をとると思わせる。追い打ちをかけるのが100日計画で、習政権が7月上旬までに目覚ましい案を提示しなければ、米通商法を活用し、高関税など一方的な措置に踏み切ることを辞さない。100日計画について、「(米側は)日本にも同様の行動計画策定を求める」(4月9日付日経新聞朝刊)と警戒する向きもあるが、メディア界に根強い自虐思考の産物だ。各紙は大統領令についても、「赤字削減へ日中に圧力」(4月1日付日経新聞夕刊)、「赤字削減へ大統領令署名」(4月2日付朝日新聞朝刊)などと報じ、日本も中国と同様の米貿易赤字の元凶視されるとみる。米中貿易不均衡は突出している。自由市場日本と、重商主義中国を同列視するのは無知そのものだが、米側からいらぬ外圧を呼び込みかねない。
日本や欧州、アジアにとっても、恣意的な党指令に左右される中国市場の規制撤廃や自由化が進むことは大変なプラスになるはずだ。中国は知的財産権侵害、外資の出資制限、送金規制など貿易障壁に覆われる。国内のネットを検閲して外部情報を遮断し、外国人が持ち込むIT機器やネットワークの機密情報へのアクセスを強要する。これら諸問題に世界貿易機関(WTO)など国際機関は無力。市場利権重視の歴代米政権は弱腰だった。「米国第一主義」のトランプ政権になって、ようやく遠慮会釈なしに大きく深く切り込む。日本は、中国問題での日米結束をうたっていけばよい。
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