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2017-04-19 00:00
国務長官の存在の耐えられない軽さ
川上 高司
拓殖大学教授
今回のシリアへの空爆は、2003年イラク侵攻をリプレイしたかのようである。2003年侵攻に先立つ2月の国連会議では、イラクが生物化学兵器を隠し持っていると当時のパウエル国務長官はその生物化学兵器が入っているとされる試験管を振りかざして主張した。シリア空爆ではアメリカの国連大使が「サリンが使われた」証拠として写真を振り回して主張していた。国連大使の様相がパウエルかと思われるほど既視感が強い。
まったく既視感の強いトランプ政権だがさらに過去の亡霊が蘇ったような政策が発表された。国防総省は、ソマリアへ米軍の部隊を派遣したと発表したのである。派遣されたのは陸軍の101空挺部隊である。101空挺部隊はやはりイラク戦争時、ペトレイアスが指揮しイラクやアフガニスタン戦争で活躍した精鋭部隊である。今回の派兵はソマリアのアルカイダ系過激派をたたき、現政権を支えることが目的だという。1993年以来、米軍がソマリアの地へ降りるのは実に24年ぶりである。
1993年、当時のクリントン政権はソマリアの内戦に介入し部隊を派遣していた。米軍は首都モガデシュでの作戦中ブラックホークが墜落し、その乗員の救出のためさらなる部隊を投入しわずか1日で18名の戦死者と多数の負傷者を出した、最悪ともいえる失敗をしている。クリントン大統領は直ちに軍を撤退させた。ブッシュやオバマ政権時代ですらソマリアには空爆はするものの地上部隊の派兵はしなかった。ところがトランプ政権になるや否や派兵が行われることになり、なぜ今ソマリアなのか、疑問符がつく。
政権内で重要ポストを軍出身者が占め、国防総省の予算が増え軍の影響力が増す。トランプ大統領自身が「強いアメリカ」を標榜し力の行使に躊躇しないとなれば、この先の世界は常にアメリカの力の行使におびえることになる。今のトランプ政権は、好戦的と言われたブッシュ政権時代よりもさらに前のめりになっている。その一方で国務省は予算が削られ国務副長官すら決まっていない。テラーソン長官がすべて1人でこなしているが、存在感の軽さは否定できない。これほどに国務長官が軽んじられる政権はまさに新たな歴史と言えよう。
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