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2017-04-07 00:00
(連載2)株式会社の弱さでトランプ対外強硬策へ
田村 秀男
ジャーナリスト
さて、米国のROEは5、6年周期で波打ってきたが、2008年9月のリーマンショック後は波形が崩れている。住宅バブルとともに2007年に頂点に達したあと、リーマン後に底を打ったが、回復力は弱々しいのだ。株価と対比させてみると、リーマン後、株価は順調に右肩上がりに上昇しているが、ROEからのかい離が際立っている。企業収益率は低下しているのに株価が一本調子で上がり続けることは不自然だ。
収益率好転と株価上昇がかみ合ったのは2000年代初めからの住宅ブーム期である。当時のJ・W・ブッシュ政権が情報技術(IT)バブル(あるいはドットコム・バブル)崩壊後の経済回復策として、住宅ブームを演出したが、消費者に住宅相場の値上がりを先取りして借金させ、消費を刺激する手法だった。言わば債務バブルがもたらしたROE上昇だった。リーマン後の景気回復は、連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和政策が担った。それは金利を大きく下げ、余剰資金を株式市場に流れ込ませ、株価を上げることに成功したが、実体経済の回復速度は遅い。企業収益の回復力は弱々しくなる。しかもFRBは金利を引き上げて金融政策の正常化を急がなければならない。
こう考えると、トランポノミクスは脆弱になってしまった米国株式会社の建て直しとしての意味がある。財政出動と減税で需要を喚起する。企業には対外投資をやめさせ、国内投資を優先させる。輸入を抑え込み、輸出を増やさせるために、通商法による懲罰関税や為替操作国への報復も辞さない。これらの政策が議会の抵抗にあうばかりか、経済的にも逆効果を招く恐れがあるとは上述した通りだが、米国株式会社の再浮揚を求められているトランプ氏はそれで引っ込むことはないだろう。
金利高になるというなら、FRBには利上げさせないよう政治的圧力を加える。国境調整税導入など保護貿易手段がドル高を招くなら、相手国に対し、その通貨の対ドル相場の押し上げを求めるだろう。日本としては、トランポノミクスに投資や技術面で協調する余地は十分あるのだが、まずは中国と同列扱いするなと釘を差すべきだ。トランプ大統領は4月6、7日に安倍晋三首相も招いたフロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で習近平中国国家主席と会談するが、人民元の対ドル・レート引き上げで合意しても、北京は人民元相場を管理、操作しているのだから当然だ。(おわり)
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