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2017-04-05 00:00
「中国は自由貿易主義だ」との言葉を逆手にとれ
田村 秀男
ジャーナリスト
トランプ米政権は新国内政策の目玉である医療保険制度改革(オバマケア)代替法案が撤回を余儀なくされ、出だしからつまずいた。失地挽回は通商など対外政策に求めるしかない。4月には、先の日米首脳会談で合意した日米経済対話が始まるばかりではない。大統領は安倍晋三首相も招いたフロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で中国の習近平国家主席と会談する。習氏は「保護主義を追い求めることは、暗い部屋に閉じこめるようなもの」(1月の世界経済フォーラム=ダボス会議=での発言)と大見得を切った。実際には、中国こそは関税・非関税両面での貿易障壁を張り巡らせている。市場は共産党官僚の裁量次第で不透明きわまりない。
対するトランプ氏は「公正貿易」の名のもとに高関税による制裁を振りかざすので、保護貿易主義者のレッテルを貼られているが、米国が公正で透明度の高い自由な市場国家であるという現実は世界のだれもが認めるだろう。米中首脳があべこべの立場で話し合うとは、何とも面妖だ。中国は世界最大の輸出大国であり、米国は最大の輸入国で、中国は輸出をひたすら増やし、輸入を減らしている。米国は輸出、輸入とも上向きだが、輸入が圧倒的に大きい。中国は典型的な重商主義国であることは明らかで、それをおくびにも出さずに「中国は門戸を開き続け、閉じることはない」(ダボス会議での習氏の発言)とはよくぞ言ったものだ。
ならば、トランプ氏は習氏の言質を逆手にとればよい。開かれた貿易国家を自負するなら、対中進出する外資を無理やり国有企業との合弁出資にさせることも、知的財産権を侵害する慣行も、ネットのアクセス制限や監視も、海外への送金規制も、輸入車への高関税も…と障壁例は限りなくあるが、すべて撤廃してはどうかと、トランプ・チームは迫ればよい。政治的に気に入らない政策をとった国からの輸入を党指令のもとに制限する。あるいは、その国の進出企業に暴徒を差し向けて石を投げ、火をつける自由貿易国家が存在するとは聞いたことはないね、とトランプ氏得意のつぶやきをツイッターで流せばよい。そして、それを中国国内でもアクセスできるんだろうねと、マール・ア・ラーゴでのくだけた夕食会の席上で習氏に耳打ちすればよい。
思えば、米国は中国に大甘過ぎた。一つは中国が世界一の成長市場だという思い込みと、もう一つは核ミサイルをぶっ放しかねない北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の抑え役として期待したからだが、いずれも裏切られっ放しだ。それは、日本の外交も同じだが、米国が目覚めたら、追随するだろう。従来の路線に縛られないトランプ氏にはできる。議会側もそれなら全面賛成だ。麻生太郎副総理兼財務相が経済対話の場で、相方のマイク・ペンス副大統領に話すべき点はそれしかないはずだ。
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