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2017-03-25 00:00
トランプ政権の円高圧力は相場に影響するか
田村 秀男
ジャーナリスト
3月は年度末で企業収益や株価に影響する円の対ドル相場が気がかりだ。トランプ米政権の円高圧力は相場に影響するのか。昨年秋の米大統領選前からの円安・ドル高基調が昨年末で止み、円相場はこのところ1ドル=115円前後に落ち着いている。拙論が為替相場動向を見る場合、重視するのは米国の実質金利から日本のそれを差し引いた日米の実質金利差である。実質金利は、日米それぞれの10年もの国債利回りと2通りの消費者物価上昇率の差である。2通りの物価とは、食料品を除いた「コア指数」と、食料品およびエネルギー関連を除いた「コアコア指数」である。
コア指数ベースの実質金利差は、米大統領選前には円相場とかなり強く連動してきた。金利差が拡大すれば円安、縮小すれば円高という具合である。ところが、エネルギー価格を除外したコアコア指数ベースの実質金利差と円ドル相場の相関度はかなり弱い。そこで、コア物価・ベースの実質金利差に焦点を合わせてみたが、昨年秋以降はそれまでとは一転して円相場は逆に振れている。実質金利はその通貨建て資産の価格とみなされ、市場では通常、実質金利が高い通貨が買われる。今年に入って実質金利差がゼロにまで縮小したが、このままだと円高・ドル安局面にいつ入ってもおかしくないし、今の円・ドル水準は「異例」ということになる。
この要因の一つは、トランプ効果だ。インフラ投資、大型減税など従来の政権が背を向けてきた景気刺激策に踏み出すというトランプ政権への期待がドル買いにつながった。そのトランプ政策が実現するかどうかは議会審議待ち、ということで市場は売り買いの方向を決めかねている。石油などエネルギー価格動向も見逃せない。実質金利差が物価指数のコアとコアコアで大きく違ってくるのは、米国のエネルギー価格の変動幅が日本よりかなり大きいためだ。今年1月の米エネルギー物価は前年同期比で10%強上昇しているのに、日本は1%弱のマイナスである。エネルギー価格を決定づける原油価格はここに来て下がり始めた。原油生産過剰が顕在化しつつあり、下落傾向が長引く可能性もある。
石油価格下落に米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げも重なると、米実質金利が上昇し、日本との金利差が拡大し、ドル高・円安に振れる。4月には先の日米首脳会談で決まった日米の経済対話が始まる予定で、日銀や財務省は神経質になっている。金融緩和と円安が同時進行すれば、かねてより「円安誘導」批判を繰り返してきたトランプ大統領をさらに刺激する。さて円高か、円安のどちらに向かうか。結局、それぞれの要因が打ち消し合うので、現行水準周辺でここしばらくの間、ふらふらする公算大だが、米議会、FRB、原油価格、日米対話の4大要因を注視するしかない。
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