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2007-02-07 00:00
まず「高度技術者の自由移動」を制度化せよ
藤田 若菜
大学生
仮に東アジア共同体が構築された場合、その最大のメリットとして考えられるのはモノ、サービス、カネなどの自由移動ではないだろうか。しかし、えてして見落とされがちなのが、ヒト、とりわけ「労働者の自由移動」である。実際「労働者の自由移動」は、加盟国の労働市場に直接影響を及ぼす問題であるだけに、どの国でも消極的な議論がなされる傾向にある。ちなみにEUでは、全てのEU市民に対してEU域内での自由移動が「アキ・コミュニテール(acquis communitaire)」(欧州共同体の基本条約に基づく権利と義務の総体)によって保障されている。こうした自由移動は、一面でEU域内の経済統合の強化に寄与しつつも、他面で労働者の受入れ状況は国別にかなりの違いがみられる。
東アジア共同体の場合、このような事態がさらに深刻化する恐れがある。理由は2つあり、第1に東アジア地域においては、先進国と呼べる国の数がEUと比べはるかに少ないということと、第2に域内の人口の総数が、EUでは4.6億人であるのに対し、東アジア(ASEAN+3+3)では31.1億人もいることである。つまり、EUと比べて東アジアでは「労働者の自由移動」は必然的に規模が大きくなり、受入国の負担は大きくなる。EUでも受入国は、労働者の過剰な流入を防ぐために移動を制限することができるが、東アジアは受入国が少ないために、その必要はいっそう大きくなるであろう。もし日本が受入れに制限をかけた場合、東アジアにおける「労働者の自由移動」は萎縮してしまう可能性がある。
日本では、少子高齢化が進み、近い将来人材不足が顕著になるであろうことが予測されている。そのなかでも専門知識・技術をもった「高度人材」の獲得競争が今後激しくなることが予想される。では、日本として東アジアの「労働者の自由移動」にどう取り組んでいくべきなのか。ひとつ提案したいのが、博士号をもった専門の技術または知識を有する者に、彼らに見合った就職口を東アジア全体で共同して作り、その中で移動を自由にするような制度を作ることである。アジア域内に彼らの能力を生かす場所を作ることによって、優秀な人材が欧米などに流出してしまうことを防ぎ、域内全体の発展につなげることができるだろう。このような方法で東アジアにおけるヒトの移動を試験的に行っていき、秩序ある労働者の受入れ体制を日本は作っていくべきである。
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