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2017-03-03 00:00
(連載1)虚妄の米ドル安路線 「貿易赤字削減」は偽情報だ
田村 秀男
ジャーナリスト
トランプ米大統領は経済・通商の閣僚・スタッフの陣容が固まり次第、主要貿易赤字相手国の通貨に対してドル安攻勢を仕掛けそうだ。為替市場に当局が介入、管理している中国や韓国などと、完全に自由な変動相場制の日本を混同するのは論外だが、その前にトランプ政権に物申すことがある。ドル安で貿易不均衡を解決できるという見方は虚妄であると。まずはドルの主要通貨に対する実効平均相場と米貿易赤字の前年比増減率に注目しよう。ドル安時で貿易赤字が減るケースはまれで、ドル安期間の大半で赤字が増えた。
貿易不均衡の幅を動かす主因はドル相場ではなく、景気である。2002年から07年にかけて赤字が大幅に増えたのは、米国の住宅バブルに伴って輸入が急増したためであり、07年のバブル崩落、08年9月のリーマン・ショックを機に内需が大きく減退すると、輸入が急落して赤字が一挙に縮小した。こうした事実は米政財界や米メディアにはわかりそうなものだが、拙論が知る限り、「貿易赤字とドル相場は無縁」との言説は聞こえてこない。
経済学上は、好況時には消費が増えて貯蓄が減り、投資に貯蓄が追いつかない。この貯蓄不足分が貿易赤字に相当すると説明できるが、いかにもわかりにくい。結局、「ドル安=貿易赤字縮小」「ドル高=赤字拡大」とする考え方が、わが物顔に横行する。トランプ流に言えば、それこそ恐るべき虚偽(フェイク)情報なのだが、トランプ氏自身は真実だと信じているようだ。それにしても、なぜドル安は米指導層をひき付けるのか。答えは米対外資産増減率にある。
米国は世界最大の対外債務国であると同時に最大の対外資産国で、海外資産規模は昨年9月時点で約25兆ドルに上る。海外資産は米企業などの対外投資によって増減するのだが、それより大きい変動要因はドル相場である。現地資産のドル評価額はドル安・現地通貨高で増え、ドル高・現地通貨安で減る。ドルが他通貨に比べて10%下がれば2兆5千億ドル弱、海外資産が膨らむ。モノとサービスの合計の米貿易赤字は年間で5千億ドル程度で、2%ドル安になればその赤字分は楽々とチャラにできるわけだ。(つづく)
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