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2017-02-24 00:00
トランプ政権にちらつく「第2のプラザ合意」
田村 秀男
ジャーナリスト
トランプ米政権の通商政策は、たけり狂ったガンマンのようだ。辺り構わず打ちまくり、円相場まで標的にする。そこで米国の一部でちらつくのは、第2の「プラザ合意」との考え方だ。プラザ合意では、米日独英仏の5カ国の財務相・中央銀行総裁が1985年9月22日、ニューヨークのプラザホテルに集まり、ドル安誘導の国際協調をうたった。ドル安・円高が一挙に進み、1ドル=240円程度だった相場は1年間で150円台まで上昇した。余談だが、トランプ大統領にはプラザホテルと日本に苦い記憶がある。氏は88年に同ホテルを買収(後に売却)したが、資金繰りに窮した揚げ句、日本企業に出資を求めたが、すげなく断られたのだ。
トランプ大統領の為替への執着ぶりはすさまじい。日本の円やドイツのユーロについても低めに誘導していると非難する。まぎれもない為替操作を行っているのは中国だし、米国の対中貿易赤字は全体の5割弱を占め、日本、ドイツに対する赤字の5倍以上に上るのだが、トランプ大統領は円、ユーロと人民元を同列にしてやり玉に挙げる。このまま、トランプ政権は日本、ドイツ、中国を巻き込んで、各国通貨に対するドル安誘導、即ち第2のプラザ合意を仕掛けかねないとの見方が出るのも無理はない。高関税によって輸入をブロックする保護貿易主義は世界貿易機関(WTO)違反として国際社会ばかりでなく、米国内でも批判にさらされ、立ち往生しかねない。
その点、通貨合意なら「自由貿易を守るため」との言い訳もできる。プラザ合意当時の「通貨マフィア」の遺伝子を受け継ぐ財務省国際派官僚には魅力のあるプランかもしれないが、ばかげている。歴史の示すところ、プラザ合意こそは産業国家日本の衰退を招いた元凶である。米国にとってはどうか。プラザ合意後、ドルは急落傾向に歯止めがかからなくなった。あわてた日米欧は87年2月、パリのルーブル宮殿でドル相場の固定を取り決めたが、半年も経たないうちに失敗し、同10月19日には史上最大規模のニューヨーク株価暴落に見舞われた。「ブラックマンデー」である。その尻拭いをさせられたのが日本である。日銀は超金融緩和政策を続けて株や不動産のバブルを膨らませた。バブル崩壊後は「空白の20年」であり、いまだに脱けきれない。
全般的なドル安誘導は、米国はおろか世界の経済を壊しかねない。世界最大の債務国である米国は、外部からの巨額の資金流入が不可欠なのだ。ドル安は資金流出要因であり、金融市場不安につながる。対外債務規模がまだ低かった80年代後半でも、ブラックマンデーが起きた。それでも為替合意をしたければ、中国との間だけでやればよい。中国だけなら世界への影響は限られる。中国は人民元相場を当局が全面的に管理している。人民元の大幅な押し上げは切り下げと同様、極めて容易なはずだ。
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