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2017-02-22 00:00
自民は、特例法で早期退位を実現せよ
杉浦 正章
政治評論家
天皇退位問題はまさに船頭多くして船山に登るがごとき状態に立ち至った。新聞を読んでも誰も分からない、その構図を分かりやすく説明すれば、「自民党政権プラス読売」対「民主・共産両党プラス朝日」の構図が浮き出てくる。焦点も、自公維が特例法による一時的措置を目指しているのに対して、民共は皇室典範による永久的な対応を主張していおり、180度異なる。背景には、政権与党のすることは何でも反対の社会党に先祖返りしたような民進党と、「天皇制」そのものを綱領で否定する共産党、の連合による自民党政権との対決の姿勢がある。民共は退位を支持しながらも、その実は難癖を付けて「引き延ばし作戦」を展開しているとしか思えない。ここは国民の選挙によって「船頭」と決まった自民党が主導して、特例法を軸として、ちょっとだけ民主党の顔を立てつつ、今国会中の法案成立を図るしかない。ご高齢の天皇のお言葉に添うにはこれしかない。
まず、皇室典範の改正がなぜ難しいかといえば、陛下の82歳というご高齢にある。皇室典範改正の迷路に立ち入れば、10年たっても決着のつく話ではない。民間なら「オレも年じゃで家督をせがれに譲る」で済む話だが、ことは天皇の存在そのものを規定する憲法と皇室典範の解釈の問題が絡む。そもそも人間の「引退」の要件を恒久立法で規定することは極めて困難だ。なぜなら、時代によって変化するからだ。高齢者の定義一つとっても、江戸時代なら50にもなれば高齢だが、今は「40、50は、はなたれ小僧」で、後期高齢は75だ。職務遂行能力にしても、会社なら上司が部下の能力を判断すれば済むことだが、天皇の場合その理由を法律に書くことが可能かということになる。このような議論を延々と始めることは、昨年8月に「第二の人間宣言」をされた天皇の引退表明の意向に背くことになる。
反対論を唱える民主党幹事長野田佳彦が自信ありげな理由はどこにあるかと考えていたが、どうも朝日とツーカーである感じが濃厚となった。朝日の“教育的指導”を受けているとすら思いたくなる。朝日は社説で「天皇の退位の意思と皇室会議などの議決を併せて必要とすれば、進退を天皇の自由な判断に委ねることにはならず、憲法の趣旨に反するとは思えない」と主張しているが、これは民進党の主張と全く同じである。皇室会議は日本の皇室に関する重要な事項を合議する国の機関である。皇族、衆参議長、首相、最高裁判事などで構成されるが、問題は天皇のご意思と会議の議決が相反した結果となったらどうするかということだ。退位という極めて人間的、個人的な意思を会議で決められるものだろうか。天皇の退位の意思は会議とは別格なのだ。
さらに朝日の社説は、特例法に対して「一代限りの退位に道を開けば、この先政権や多数党の意向で天皇の地位が左右される恐れが生まれ、禍根を残すことになる」と反対している。これも意味不明である。一代限りは一代限りのことで、将来への禍根とならないのではないか。例えば100年後に今回の例のように天皇が退位したいとの意思を表明すれば、そのときの状況に応じて対処すればよいことであり、制度化して縛る必要はない。それに100年後には今回の例を先例としてスムーズな退位が実現するかもしれない。第一、自民党が100年後にも多数党であるかどうかは予知できない。この主張には民進党が多数党になった場合ならその意向を反映してもよいのだという、政党のエゴイズムが垣間見える。一方で読売社説は「仮に、天皇の意思を退位要件とすると、『天皇は国政に関する権能を有しない』と定めた憲法4条に違反しかねない。こうした理由で制度化に否定的な自民党の姿勢には、うなずける」と述べており、自民党案支持だ。
問題は、民進党が明らかに引き延ばし戦術を取ろうとしていることだ。同党の長浜博行はテレビで「各党の国会議員はもう一度象徴天皇制の意義とか、憲法とか、皇室典範とかに真正面から取り組んで議論する必要がある」と主張しているが、このような基礎的な問題からとりかかっていては、再び「船山に登る」こととなるのは必定である。議員立法による処理も主張しているが、事は天皇の退位問題であり、政府の責任において法案を作成し、国会の議決を経て実施に移す、のが憲政の常道だ。こうした中で日本維新の会幹事長の馬場伸行は「皇室典範そのものを改正するのではなく、『特例法を設けて決める』旨を皇室典範の付則として付ければよい」と提案している。皇室典範はいじらないが付則で処理するという案は、筆者もかねてから指摘していたが、民進党のメンツも立つのではないか。ことは自公維で軽く3分の2を超える勢力が推進する問題であり、民共も突っ張ったり、引き延ばししたりする場面ではない。そもそも民共朝による“共闘の構図”は過去の例を見ても概ね失敗に終わるのが政治の宿命だ。
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