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2017-02-17 00:00
“一つの中国”は両刃の剣ー台湾主導もあり得る
倉西 雅子
政治学者
アメリカのトランプ大統領が中国の習近平主席との電話会談において“一つの中国”の原則を尊重すると述べたことから、中国は、「褒めたたえたい」としてもろ手上げてこの発言を歓迎しております。トランプ政権発足に際して中国の最大の懸案事項は台湾問題であっため、中国としては安堵の気持ちを表現したのでしょうが、中国は、“一つの中国”の原則に喜んでいられるのでしょうか。
中国側の発想では、“一つの中国”とは、中華人民共和国による台湾の併合を意味しています。国共内戦の勝利者としては、台湾は、いわば、敗者である国民党が逃げ込んだ最後の砦であり、この地を陥落させれば、共産党による“全土支配”が完成すると考えているのでしょう。しかしながら、“一つの中国”とは、必ずしも中華人民共和国による台湾の併合のパターンに限定されるわけではありません。
当初、中華民国の国名を名乗ったものの、国民党による一党独裁から多党制に移行した今日の民主国家台湾と中華民国との関係は曖昧です。中華民国よりも、現在の台湾人は、独立国家としてのアイデンティティーを強く意識できる台湾という国名を好む傾向にあるようです。とはいうものの、中華人民共和国が“一つの中国”を主張する以上、台湾にも、“一つの中国”を主張する権利が生じます。即ち、台湾による中華人民共和国の併合も、論理的にはあり得ないわけではないのです。
中国大陸では、共産党一党独裁に対する不満が燻っており、それ故に、中国は、民主化を求める活動や体制批判的言論を弾圧し、各地で頻発している政府に対するデモなども治安部隊で押さえつけています。強権によって一先ず政権が維持されていますが、仮に、中国が台湾に対して武力併合を試みるといった有事が発生した場合には、中国国民の中には、台湾に与して共産党支配の打倒に立ち上がる人々も出現するかもしれません。加えて、台湾とアメリカとの準同盟関係は、このシナリオの実現性を高めています。中国の歴史では、民衆の反乱が王朝崩壊の引き金を引く事例が多々ありますが、“一つの中国”の原則は、中国にとりまして両刃の剣であると思うのです。
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