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2017-02-08 00:00
(連載2)グローバリズムと保護主義の狭間で揺れる中国
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
ダボス会議での習近平氏の演説の背景にある意図は、果たして何であったのであろうか。中国が国家として抱える「内憂外患」が何かを考えてみることで自ずと見えてくる。内憂とは、まさしく経済発展の副作用である環境破壊、環境汚染の深刻さであり、急激な経済の衰退である。1月13日に、中国税関当局は2016年の貿易統計を発表している。それによると輸出額は前年比7.7%減、輸入額は同5.5%減という衝撃的な数字であった。世界中の誰もが知ることとなった大気、水、土壌の悲惨な環境汚染があり、真剣に取り組まなければならない崖っぷちの状態となった。そして、急激な経済の衰退が同時に起こり、将来への不安がある。これが内憂としての頭痛である。では外患とは何か?習近平氏が中国ドリームとして進める「一帯一路」政策への世界的な向かい風と米国を中心とする保護主義、自国優先主義による「貿易戦争」による経済の影響である。中国は安価な巨大な労働力と拡大し続けた巨大な市場をバックに、中国第一主義を貫きながら世界第2位の経済大国にのし上がった。しかしこのパターンでは限界に達したのだ。
中国は今、国家発展を見据えた大きな政策変更を余儀なくされている。市場経済を取り入れる事で経済的な発展をもたらした「既存の経済システム」を今一度見直し、中国発の新しい産業創成(イノベーション)を全面に立てて、新たな中国主導の世界経済を組み立てる野望を持つ。そして、その大きな主軸が環境技術と素材技術であり、13億の人口という莫大な情報「ビッグデータ」を活用した新しい技術であることは明らかである。特に環境技術においては積極的に外国の優れた技術を取り入れ、中国企業との連携、合併、協同研究などを進めて中国に於いて実を結ばせ、それを今度は世界に輸出するという将来像を描いている。新しい技術で中国国内の環境問題を解決すると同時に、そこで実施された経験を持って中国国内の企業を成長させる。そして彼ら主導の新しいイノベーション技術としてビジネス化し、世界進出の新たな筋道を作るというのが中国政府の戦略だ。だから、習近平政権にとって上記の環境問題「パリ協定の堅守」とグローバリズム「保護主義の牽制」は絶対に避けて通れないのだ。環境問題の解決と経済の活性化の両方を実現していこうというのだ。「パリ協定の堅守」と「保護主義の牽制」に彼らの新たな理想が伺える。
このような世界的な情勢下、日本企業のビジネス戦略はどう進めていくべきだろうか。西欧世界の自国優先主義の趨勢は日本一国が止めることのできる時流ではない。しかし、世界で起きている環境問題とエネルギー問題、そして両方の解決に繋がる新素材の開発などにおいて、日本が持つアドバンテージは大きい。解決のキーとなる技術が、日本にごまんと埋もれており、それらの技術を掘り出すことで如何様にも日本主導のイノベーションを起こしていくことができる。環境、エネルギー、システム化における先端技術で優位に立つ日本にとって、時代は大きなチャンスを与えてくれている。しかし現在、日本は企業の肥大化による悪弊にとりつかれ、共産主義国家以上に共産主義的と言われるほど、身動きがとれなくなっている。まさしく閉塞感で一杯だ。
昨今の大企業と呼ばれた企業群の体たらくと身売り、そして中々そこから抜け出せないのが現日本の自家撞着状態だ。この状況を打破するためにも、今ひとたび中小企業の素晴らしい技術に焦点を当て、それらを政府主導の世界ビジネス化することが求められている。これまでの大企業主導ではなく、今ひとたびイノベーションの塊である中小企業によるビジネス環境再編成こそ、経済の発展と人材雇用の解決策だと思う。内憂外患の中で蠢く隣国中国は喉から手が出るほどこれらの技術を待ち望んでいる。中国だけでない。アメリカもヨーロッパも苦悩の時代に入りつつある。この中で日本が輝きを取り戻すチャンスが訪れている。日本企業の新たな挑戦精神こそが日本の未来を明るくするはずだ。(おわり)
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