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2017-02-07 00:00
(連載1)グローバリズムと保護主義の狭間で揺れる中国
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
2017年も既に1ヶ月が過ぎた。この1ヶ月の間に今後の世界を左右する出来事が多く起きた。まさに歴史的転換点にふさわしい1ヶ月といえた。激動の時代の中で先進国の国々が注視せざるを得なかった出来事が2つある。1つはアメリカのトランプ大統領就任で、もう1つがダボス会議であった。トランプ大統領は就任するやいなや、アメリカ第一主義を明確に打ち出し、難民・移民を受け入れない方向と保護主義の政策を展開している。メキシコとの国境に壁を作ることも真剣に考えている。アメリカとメキシコの国境は長く3,000キロを超える。年間100万人が不法的移動をしている。世界で最も不法的移動が行われる国境であり、アメリカはこれまでにも問題視し対策を行ってきた。これまでにも既に壁は作られており両国の国境の3分の1ほどに金属製の柵や壁がある。砂漠地帯にはまだ壁や柵はなく現在も命をかけた越境が行なわれている。トランプ構想はさらに頑強な壁を国境全てにつくるというものだ。イスラム圏からの移民や難民に対しても厳しい政策をとろうとしている。トランプ大統領はシリア難民等の受け入れ停止やイスラム教徒の多い国への入国ビザの発給停止等を盛り込んだ大統領令にも署名した。まさにアメリカに巨大な壁をつくりつつある。
また貿易に関しても完全に保護貿易の方向だ。日本にとっても大きな懸案であった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に対して、トランプ大統領は離脱を正式に発表した。メキシコとの貿易に対しても厳しい態度を示している。メキシコの貿易額は年間で計5,000億ドルにも達しており、お互いに重要なパートナーのはずだ。しかしトランプ氏はNAFTA批判を続けており脱退も示唆している。中国、日本、韓国などとの貿易についても、アメリカが有利になるように主張している。自由貿易のリーダーとしての誇りを捨て去るような方向を打ち出している。世界経済の大きな懸案になっている。
1月17日~20日に開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、初参加の習近平中国国家主席が行った演説には多くのメディアが注目し、様々にその意味するところを評論している。中国の苦悩と戦略が垣間見える。内憂外患の中にある中国という国家の主席として、習近平氏が言及しておきたかったことは何か?それは、1つは「保護主義の牽制」であり、もう1つは「パリ協定の堅守」だ。かつての中国からは考えられないような展開だ。習近平氏は、保護主義に関して次の様に発言した。「世界を取り巻く多くの問題は、決して経済のグローバル化がもたらしたものではない」と断じ、「(世界の)異なる人たちがグローバル化の利点を分け合えるようにすることが、我々世界のリーダーがこの時代に果たすべき責任だ」とリーダー達の保護主義傾倒を牽制した。トランプ新大統領の保護貿易主義を念頭に置いた発言だ。今後の世界に於いて中国が自由貿易のリーダーシップを果たすと言わんばかりだ。
ただその中国も実情は複雑で、自由貿易へのアクセルと中国から外貨が流出しないように「保護」する自由貿易へのブレーキとを同時に踏んでいる状態といえる。とはいえ、中国はかつて2010年に世界貿易機関(WTO)加盟に至るまでは、経済のグローバル化に対して疑いを持ち、中国の経済発展に大きなマイナスの影響を与えるのではないかと自ら保護主義にこだわってきた。こんなにも世界情勢が変化したのかと隔世の感がある。パリ協定に関しては、「パリ協定は世界の発展の方向と一致しており、共に堅守すべきで放棄してはいけない。これは我々が負わなければならない次の世代に対する責任だ」と支持を表明した。中国はまぎれもなく環境後進国であった。中国のいいかげんな環境対策は、スモッグで覆われた空、様々な色に濁り、汚染された川、化学物質にまみれた土壌を作ってきた。その中国が環境対策で、前向きに取り組むことを宣言しているのだ。これも驚きの変化といえる。(つづく)
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