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2017-01-27 00:00
(連載2)アメリカの弱体化と世界の混乱の深刻なリスク
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
トランプ大統領もメディアは敵だ、という姿勢を明確にしている。ロイター(1月22日)によると「米ホワイトハウスは22日、トランプ大統領の就任式の観客数をめぐるメディア報道について、政権に対する不当な攻撃だと批判し、『全力で』戦う姿勢を示した」。メディアもトランプ批判では手加減をしていない。トランプ大統領は、メディアとの戦いでは情報管理やさらにはメディア管理にまで進んでいく可能性が高い。こうなるとメディアは「言論の自由を守る」という正義のスローガンを得ることになり、戦いはさらに加熱するだろう。
アメリカ在住の移民はトランプ大統領誕生で不安を抱えている。まずは不法入国者の強制送還の可能性だ。オバマ政権の政策のもとでアメリカでの安定を掴みかけた彼らの未来は一気に不透明になっている。不安と恐怖が、強いトランプ反対へ駆り立てている。他の外国人や移民もトランプ大統領の政策を極右勢力が支持していることもあり、アメリカが住みづらくなると感じている。トランプ大統領の政策がどれくらい本格的に彼らに厳しいものになるか。それによっては、反トランプというだけではなく、人種間・民族間の亀裂をさらに深めることになるかもしれない。これはアメリカ社会の治安の悪化に繋がりかねない。
女性運動家も激しくトランプ大統領を批判している。実際に、トランプ米大統領が就任した翌日の21日の抗議デモは女性が中心となって企画実行したものだ。女性運動家の魂に火がついたとでもいえようか。簡単にこの火を消せるとは思えない。トランプ大統領が火消しに力を注げば注ぐほど、この火は強く、広がっていくという感じだ。これまでのアメリカ大統領へ「不支持」とは異なるレベルでの「嫌悪的不支持」「不退転の不支持」を感じる。この状態でアメリカの政治や社会はまともに動くのだろうか。「アメリカ・ファースト」の志向は、外国との摩擦も生む可能性が高い。
アメリカは分裂と相剋の時代に入った。第二次世界大戦後、いい意味でも悪い意味でもアメリカは世界のトップリーダーであり、世界の警察官であった。分裂と相剋のアメリカは、アメリカの混乱と世界の混乱を引き起こすリスクがある。私は特に国内の方が問題だと思っている。共和党であろうと、民主党であろうと、アメリカ大統領は国民からのリスペクトを受け、「民主主義の国・アメリカ」のスローガンのもとに、国の方向、世界の方向をリードしてきた。知識人からもメディアからもこれだけ嫌われる大統領はおそらく初めてではないだろうか。「大統領暗殺」の可能性を示唆する人も少なくない。分裂と相剋のトランプ・アメリカはどこへ行き着くのか、何をもたらすのか。(おわり)
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