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2017-01-26 00:00
トランプ大統領の対中強硬策は本物
田村 秀男
ジャーナリスト
トランプ米大統領が「おれは『一つの中国』に縛られない」と何度も言い切り、北京の習近平政権をあわてさせている。「一つの中国」とは、1972年のニクソン訪中以来の中国共産党の台湾に対する基本原則であり、米国は中国の立場を承認としてきた。ところが、トランプは従来の路線を維持するかどうかは、中国の人民元政策、通商、南シナ海への海洋進出、北朝鮮の問題での出方次第だ、と踏み込んだ。例によってトランプ大統領流の荒っぽい恫喝だとみなす向きもワシントンにはいるようだが、トランプ大統領がそれだけ強硬になれるだけの根拠はある。
米歴代政権はまずは、旧ソ連との冷戦に勝つために「チャイナカード」を使う必要があったし、冷戦終了後は中国市場での米企業の商業権益獲得を優先した。中国はこの間、人民元を安いレートでドルに固定し、外国企業から資本と技術を導入すると同時に輸出を急速に拡大し、経済の高度成長を実現し、2010年には日本を抜いて米国に次ぐ経済超大国になった。中国市場で儲ける企業にとってはよかっただろうが、中国製品との競争で不利に立った米産業界は工場を閉じて中国に進出し、白人中間層は製造業での雇用を失った。他方で経済パワーを背景にして北京は急速に軍拡を進め、南シナ海などへの膨張に乗り出し、安全保障上の脅威をまき散らしている。
それでもワシントンが北京との対決を避け、融和路線をとってきた最大の要因は、債務国米国の弱みからくる。2008年9月のリーマン・ショック後、米国債の最大のスポンサーになった北京に対してワシントンは下手に出ざるを得なかったのだ。局面はここに来て変わった。昨年8月以来、中国から資本逃避が加速している。中国人民銀行は人民元相場暴落を防ぐために外貨準備(外準)資産の米国債を売って人民元を買い支える。それでもニューヨーク・ウォール街が安心していられるのは、北京による米国債売却をはるかに上回る人民元資金がドルに転換されて、ドル資産に投じられるからだ。ワシントンもニューヨークも北京による米国債売りを気に病む必要は全くなくなった。
資金流出額は年間で1兆~1・2兆ドル(115兆~138・5兆円)とすさまじく、外準の縮小に歯止めがかからない。資金流出には中国企業による外国企業買収など合法的な対外投資が含まれるが、5割以上は中国の不動産相場下落や人民元安を嫌った資本逃避によると米欧の金融機関はみている。米国がチャイナマネーを欲しがらなくても、中国の方からまるで巨額の避難マネーが国境を越えて押し掛ける。トランプ大統領はウォール街の盟主、ゴールドマン・サックス出身者を政権の要職につけた。言うことをきかないと、ウォール街から中国資本を締め出すぞ、とでも言わんばかりだ。
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