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2017-01-23 00:00
韓国とロシアへの対応が異なるのはなぜか
牛島 薫
団体職員
1月21日付の本欄への児玉克哉氏の投稿「韓国に衝撃を与えた駐韓大使の一時帰国」と同様の感想になるが、釜山日本総領事館前での「慰安婦像」設置に対する日本政府の対応には驚きを禁じ得ない。正直なところ、駐日大使を呼び付けて抗議し遺憾の意を伝えるのが精一杯だと考えていた。それが従来のあるべき日本外交である。そう考えると、これは安倍総理の個人的決断によるものだろう。外務省が出来るだけ早く駐韓大使らを韓国に戻そうと奔走し、にもかかわらず日本国内に留め置かれているのもそのために相違ない。
大使不在により日韓関係が停滞するという外務省の主張は、朴槿恵大統領が健在だった日韓合意後の一年間で慰安婦問題に何も進歩がなかった点で説得力がない。そして、長嶺大使が韓国にいたところで、日韓関係を推進する機動力のあるカウンターパートは混沌とした現在の韓国には存在しない。そういう意味では、今回の駐韓大使一時帰国は最高のタイミングだったとも言える。日韓関係の実質的な悪影響を最小限に抑えて且つ最大の象徴的刺激を与える絶妙な一手になったように思う。韓国サイドが竹島に慰安婦像を設置しようという動きも民間レベルにもかかわらず日本政府側は敏感に反応し、結果的には当初は短期間で韓国に戻ると専ら報道されていた駐日大使らは未だに日本に滞在しスワップ交渉も暗礁に乗り上げたままだ。
ただ、ここからが本題だが、韓国に対してこのような強気の対応をする政府があり、それを後押しする世論と肯定的なメディアがいるならば、なぜそれが対ロシアではそうはならなかったのかが改めて不思議である。先の日露首脳会談では、先立って択捉島にロシアが対艦ミサイルを設置するという前蹴りを日本にくらわしてきたが、対抗処置を加えただろうか。あるメディアに至っては、この挑発を指摘するどころか「ロシア陸軍の動きはプーチンの意志とは無関係。スケジュールによるもので悪意ではない」という解釈をするところまであった。現実逃避である。プーチンの意向なくして、この時期に対艦ミサイルといういっぺんに戦況をひっくり返しうる強力な兵器を択捉島という重要な海路を封鎖するのにぴったりな島に持って来られる組織などロシアにはない。にもかかわらず、竹島には過敏に反応する世論も北方四島には諦観しているのか反応がない。安倍政権もロシアには「大陸的な観点」からか慇懃な姿勢を崩さない。
韓国とロシアでは相手が違いすぎるというのも確かにそのとおりだが、アメリカという鎹がある日韓関係や竹島より、地政学上の要衝でいざというときには戦場になりかねない北方四島と日露関係の方が遥かに毅然とした態度が求められる。これでは日本をアメリカの衛星国扱いするロシアの対日観も変わるはずがない。首脳会談の場でプーチンに択捉島の対艦ミサイル設置に抗議すべきであったし、THAADの北海道導入検討の噂を流すくらいはあっても良かったのではないか。そうなれば山口での会談は失敗したかもしれないが、急がば回れである。ロシアが増えたり減ったりする金と血と汗が染み込んだ土地を同じ次元でビジネスすることは決してない。韓国に強気に出て溜飲を下げるだけではなく、これを他につなげてほしい。
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