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2016-12-22 00:00
異色で強面の交渉人が国務長官に指名
川上 高司
拓殖大学教授
トランプ次期大統領は意表を突いて話題をさらうのが上手である。外交の要である国務長官に誰を指名するのか、アメリカのみならず世界中が候補者を列挙して待っていた。候補のリストにあったのは、ミット・ロムニー、ジュリアーニ、ペトレイアスなどそれなりにありそうな名前だった。だが、既存のものに縛られないトランプは、国務長官には石油メジャーのエクソン社のCEOであるレックス・テラーソンを指名して世界中をあっと言わせた。全く話題にもならなかったテラーソンの指名に「商売人に外交ができるのか」という怒りにも似た反発がワシントンでは渦巻いている。しかもテラーソンはロシアにきわめて近い。
「ウクライナ紛争でロシアへの経済制裁に反対し、プーチンとも親しいテラーソンはアメリカの国益と相反する」と上院議員のマケインはさっそく噛みついている。上院での指名公聴会は荒れそうである。しかしトランプの意図はあながち無茶ではない。それはテラーソンのキャリアを見ると見えてくる。中には「案外いいかも」と期待する元外交官もいるほどだ。
1952年テキサス生まれのテラーソンは現在64歳。23歳でエンジニアとしてエクソンに入社して以来エクソンに勤め、1995年43歳でイエメン支社の社長、1998年にはロシアのエクソン支社であるネフトガス社の社長に就任した。2006年に53歳の若さでエクソン・モビル社のCEOの座についた。石油が国のエネルギー政策の中心であり外交のツールとして有効だった時代にテラーソンはその最前線にいたことになる。しかも石油ビジネスは中東を中心に展開する。当然ながら中東諸国の指導者らとのタフな交渉をしなければならない。
そしてロシアではさらにタフで強面の交渉人であるプーチンとも渡り合わなくてはならない。プーチンとサシで会談した回数はおそらくどこの国の指導者よりも多いというくらいだ。その成果があってエクソンはロシアでの就業が実現し、テラーソンはプーチンからの信頼も厚い。テラーソンがプーチンと同じくらいにタフで強面であるという証左だ。人生を石油ビジネスにかけて文字通り世界を舞台に活躍してきたテラーソンの経験がシビアな外交交渉に十二分に発揮されれば、アメリカの外交がスマートに展開するかもしれない。ロシアと親密になることは決して悪いことではない。シリア内戦を始め多くの紛争が解決に向けて進む可能性は高まる。トランプ政権の外交に注目したい。
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