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2016-12-07 00:00
天皇の「第2の人間宣言」に人間らしく応えよ
杉浦 正章
政治評論家
何も、深刻に考えることはない。天皇陛下のお言葉をウチの爺さんと比較しては恐れ多いが、分かりやすく言えば「わしも年じゃ。家督をせがれに譲り、人並みに老後を楽しみたい」ということがすべてだ。息子なら「そうかい。ご苦労さん」と受け入れるが、これを有識者なる人々がなんと3か月もかかって「愚説・卓説」論争をしてきた。そんな時かと言いたい。「老後の楽しみ」に間に合わなかったら、国民挙げて慚愧(ざんき)に堪えなくなるではないか。いってみれば天皇のお言葉は戦争直後の昭和天皇の詔書の核心「人間宣言」の流れをくんで、「第2の人間宣言」の形で述べられたものであろう。従って対応もきわめて温情あふれる人間的なものにして差し上げなければならない。退位を一代限りの特例法にするか皇室典範の改正で恒久制度とするかが焦点になっているが、間に合わせることを最優先しなければ意味がない。両論を対立させることはない、政治が得意の両者の満足する折衷案を出すべき時だ。
昭和天皇の人間宣言のポイントは 「朕ト爾等(なんじら)国民トノ間ノ紐帯(ちゅうたい)ハ、終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神トシ、且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニモ非ズ 」である。私は現人神ではない人間であると言っているのだ。今上天皇は「二度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました」「幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と述べておられる。要するに一般国民と同様の悩みを抱いておられることが分かる「人間宣言」なのだ。
お心に沿って対応する方法は、スピード感の一言に尽きる。有識者なるものの論議を聞いていると「火事を目前にして火の用心を説く」がごとき説を唱える向きがある。とりわけ退位反対論は議論を象牙の塔の迷路に巻き込もうとするかのようであり、傾聴に値しない。有識者会議の学者の見解を分析すれば大きく3つに分けることができる。それは、(1)一代限りの特例法を作って退位に道筋をつけるべきだ、(2)憲法違反にならないよう、皇室典範の改正により退位を恒久制度化する、(3)退位そのものに反対する、である。このうち退位反対論はまるで安保法制に反対したときの憲法学者のような愚論であるから一顧だに値しない。3回にわたるヒヤリングをつぶさに分析すれば、人選にあたった政府も、巧みな操作をするものである。最初のうちは政府が一代限りと考えている特例法に同調する者を少なくし、最後の3回目に至って一挙に増やして、16人中8人が特例法を認める結果を演出した。退位反対は7人にとどめる操作をしたのだ。メディアの報道は、やれ数が増えたなどと数の報道に懸命であったが、恣意的に政府が決めた人選なのであり、数は全く意味がない。退位問題の在りどころを露呈させることだけに意味があるのだ。総じて言えば世論調査で80から90%が退位に賛成していること自体が重要なのである。
もともと「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」のまとめ役の座長代理御厨貴は、政府から10月17日に任命を受ける前に、TBSの「時事放談」で臨時的な立法措置による退位を主張していた。いささか唐突な発言に感じたが、朝6時の番組を見ている記者は少なかろうから、からくりが分かっていない。方向性は最初から出ているのである。御厨のとりまとめは、自分の主張通り立法措置により早期退位を実現するところに落ち着くものとみられる。
その上で政治が判断することになるが、これまでのところ自民、公明、維新、こころの4党は、政府が検討する特例法による対応を容認する方針だ。速やかな生前退位を可能とするためには、特例法もやむを得ないとする。これに対し、民進党代表野田佳彦は皇室典範改正論だ。共産、社民、自由の3党も皇室典範の改正が筋だと主張し、特例法には反対の姿勢だ。問題なのは共産や社民はどうでもいいが、国民的合意を達成するには少なくとも民進党を引き込まなければならないことだ。加えて報道各社の調査では特例法の支持は2割、皇室典範の改正支持が6、7割と言う結果が出ている。妥協策としては時間のかかる皇室典範の大改正は次期通常国会では行わず、退位を現天皇に限った“特例措置”とするために、皇室典範の付則に条項を追加する程度にとどめることが考えられる。そうすれば皇室典範改正派を納得させられるのではないか。また別の方法もある。特例措置法案を単独で提出するが、皇室典範の改正も審議会を作って恒久的な退位制度を検討した上で行うことを確約するという二段構えの方式だ。いずれにしても急いだ方がよい。
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