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2016-11-13 00:00
(連載1)米国大統領選挙結果をどう評価するか
廣野 良吉
成蹊大学名誉教授
米国の大統領選挙で、ドナルド・トランプ氏が勝利したことに、国内外のマスコミを含めて、世界の多くの識者は驚いたようです。小生も、妻を含めて長年の米国民との付き合いから、米国民の良識を信じて、ヒラリー・クリントン氏が勝利すると思い、なおかつ期待していました。その予想は、正に裏切られて、現在の米国の政治経済社会のありように怒っている多くの米国民の不満を煽り、それに集中して選挙運動を始終してきたトランプ氏が勝利しました。一方で各州別にAll or Nothingという米国大統領選挙制度の影響が大であったとはいえ、国民投票数でもトランプ氏に対するクリントン氏の得票数が僅かしか上回ったことを考えると、米国民の多くに内在する苦悩を十分に読み取れなかった自分を反省しています。以下が、大統領選挙でトランプ氏が勝利宣言をし、クリントン氏が敗北宣言をされた。11月9日(EST)直後(日本では11月10日)時点における米国大統領選挙結果についての小生の感想・評価です。
先ず申し上げたいことは、今回の米国大統領選挙が従来とは異なり、最初から最後まで、候補者同士が相手の欠点に照準を合わせた「醜い選挙運動」であったことです。この戦術を最初にとったのがトランプ氏であり、クリントン氏も、黙って見逃すことが出来ず、それに反撃したことは事実でしたが、このようなやり取りで後味が悪い選挙戦でした。今回の米国大統領選挙は、ここ数年世界各地、特に先進諸国で激化している。所謂Establishment」対「反Establishment」が米国へも波及した結果という色彩が強かったといっても過言ではないと思います。米国が1980年代レーガン政権以降強力に進めてきた国内での規制緩和、貿易・投資・金融の自由化を基軸とした世界経済のグローバル化(高い経済成長の背後で生まれてきた所得・資産格差の拡大、地域間格差、若者の高い失業率等)とIT・スマホ、ソシャルメデイアを通じた国内外政治への大衆の参加という「民主化の成功」の浸け(Establishment政治への不信の増幅)が米国へ回ってきた結果といえるでしょう。
トランプ氏へ投票した人々が、国政では米国社会の現状に対して、雇用、賃金所得、社会保障等いろいろな側面で不満をもち、外交面ではイラク、アフガニスタン、シリヤでの内戦と政治的不安定の長期化へ米国が無力であったことにみるように、世界における米国の指導力の陰りにいら立ちを感じていたことは周知の事実でした。この不満のはけ口として、トランプ氏を選んだといえるでしょう。クリントン氏は、ご主人が元大統領であり、オバマ政権で国務長官を務めてきており、ハーヴァード大学卒業の弁護士というエリートであることから、Establishmentの典型的候補者であることに、反感を覚えた選挙民が多かったといえるでしょう。もしサンダース氏が民主党大統領候補者であったなら、トランプ氏へ投票した人々の不満分子のかなり多くの人々が、サンダース氏へ投票しかも知れません。
米国の従来の大統領選挙では、共和党と民主党候補者が、任期2期(8年間)務めたら、それぞれ入れ替わるといのが通例でした。そのような形で民主党のオバマ大統領の後釜として共和党候補者であるトランプ氏へ投票した人々や女性が大統領へなることに反対してトランプ氏へ投票した保守的な人々もいたかもしれません、米国中西部や山間部には、このような考え方を持った人々が比較的に多いということは、昔から指摘されてきました。しかし、今回はそのような伝統的慣例や地域的な特徴よりも、全米を通じて現状への不満階層と現状維持階層との闘いであったという側面が強かったと見ています。今回はオハイオ、ミシガン、ウィスコンシンという従来民主党が強かった州でさえ現状への不満層が多く生まれて、トランプ氏への選挙人投票という結果を招きました。それほどまでに、世界経済のグローバル化の進展の中で、米国産業、特に製造業の国際競争力の低下に伴い、米国社会がこの十数年の間に変わってきたとことだと思います。オバマ大統領が8年前に共和党候補を破って選出されたのも、この変化の表れであったともいえるでしょう。今回のトランプ氏の勝利は、この延長線上にあったといってよいでしょう。(つづく)
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