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2007-01-20 00:00
連載投稿(2)「過去と現在との対話」作業を怠るな
滝田 賢治
中央大学教授
第3に、具体的には、関係国間で問題になっているいくつかの主要な歴史上の問題を、延々と時間をかけてエンドレスに議論していくのではなく、次の段取りをとっていく。即ち、(1)問題群の一覧を作成する。(2)関係国それぞれの――といっても、各国内に意見の違いがある場合には、その主要な議論も含め――基本的見解あるいは認識を整理して明らかにし、対照出来るようにする。(3)各国の歴史的根拠としている史料・資料、あるいは客観的な証言をそれらに付する。(4)互いに、他国が出してきたこれらの材料に、必要が在れば反証する。関係国以外の第3者の専門家の意見をこれに加える。
これら(1)、(2)、(3)、(4)を、いわば一覧表的に表記した段階で、公表し、より広く実績のある専門家、ジャーナリスト、作家の討議に付す。かって1972年の米中上海コミュニケのように「agree to disagree(意見が一致しなかったことで意見の一致を見た)」でもよいのである。同じ問題をめぐって、どのように見解が違うのか、その根拠は何なのか、その根拠の真贋はどうなのか、という歴史問題をめぐる大きな枠組みを提供することから始めるべきであろう。
隣人との境界争いならば、場合によっては引越しして行けば済むかも知れないが、国と国とではそれは不可能である。日本列島をハワイの隣にもって行くことは出来ないのである。未来志向で経済協力や環境問題などを協調主義で解決していかなければならないが、これと並行して、将来の更なる協調主義の実質化のためにも過去の遅ればせながらの清算をしなければならない。
このためにも時間的に見れば「最近の」歴史問題について、互いに「言いっ放し」にして、「ナショナリズム」なる言葉で安易に自己陶酔するのではなく、共通の理解の範囲を一歩一歩広げていかねばならない。何時の時代にも掛け声だけは威勢のいい「ゼロット派(熱狂派)」はいるものである。しかし何時の時代の、どこの「ゼロット派」も愛国を叫びながら国を滅ぼしたのである。「過去と現在との対話」という作業を怠った時、再び悲劇に見舞われるであろう。(おわり)
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