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2016-10-13 00:00
(連載1)ドイツを悩ます8つの衝撃
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
この10年のメルケル首相をトップにしたドイツの存在感は素晴らしかった。メルケル首相は、2005年11月22日に首相に就任してから「ドイツのお母さん」と称され、高い支持率を誇ってきた。ドイツ経済も好調で、EUを牽引する役割を担った。ちょうどこの時期は日本が混乱し続ける時期であった。経済は低迷を続け、1年ごとに首相が交代し、国の方向が定まらない状態であった。メルケル・ドイツはヨーロッパの盟主として、アメリカに対抗できる国際的な影響力をもってきた。そのドイツに異変がみられる。
第1に、中国との関係である。メルケル・ドイツは中国との蜜月関係を持ち、それがお互いに大きな利益をもたらしてきた。10年余りの就任期間でメルケル首相が中国を訪問したのは実に9回だ。ドイツと中国との距離を考えると異常な回数だ。ちなみにメルケル首相の日本訪問はわずかに3回だ。しかもそのうち2回は洞爺湖サミットと伊勢志摩サミットのサミット参加で、残りの1回はエルマウ・サミットに向けた事前調整のためというから、サミット絡みだけといっていい。メルケル首相の親中のスタンスは明らかだ。ドイツと中国の貿易は拡大し、ドイツ経済の成長の柱となった。中国は生産拠点としても、大市場としても魅力のある国であった。経済の発展が素晴らしい時には、様々な不平等的な問題も隠されてきた。ドイツと中国は密接なパートナーとして活動し、中国はEU、つまりヨーロッパへの参入権を得た形になった。しかし、中国経済の成長が鈍ると、問題が噴出してきた。中国との貿易が停滞しながらも、ドイツ企業は撤退しようにも撤退できにくい状況に置かれる。しかし、中国の企業はドイツの優良企業を買収していく。中国家電大手の美的集団は、ドイツの産業用ロボット大手クーカを買収した。中国との貿易は好調な時には問題が隠されるが、不調になると問題が噴出してきた。中国との貿易拡大で成長してきたメルケル・ドイツは方向転換を迫られている。
第2に、ロシアとの関係である。これも重要なポイントだ。EU諸国はプーチン・ロシアにはやや距離をおいた付き合いをするが、メルケル首相は、親露政策を打ち出してきた。特にロシアの油田・ガス田にはドイツ企業は多額の投資を行い、原油や天然ガスを買ってきた。原油価格が高騰する時期と重なり、ロシアにもドイツにも多大な収益をもたらした。アメリカの敵といえるロシアと中国と連携を強め、ヨーロッパをまとめるという戦略をとったのだ。そしてそれがことごとく経済的にもあたった。しかし、これも原油価格が急落すると状況が一変する。そしてその時期がロシアがウクライナと問題を起こす時期と重なる。ロシアとの関係も見直さざるを得なくなる。
第3に、増え続ける難民・移民問題である。ドイツにとって難民の受け入れは、ドイツの将来的な労働力という位置づけもあった。メルケル首相の人道的な思想もあるが、それだけでは難民の受け入れはできない。ドイツの好調な経済を反映して、ドイツの失業率は低く抑えられてきた。基本的に労働力不足の状態であり、難民や移民が増えることに大きな反対はなかった。安い労働力の確保という要素もあり、国際的な評価が高まることなどから、ドイツ国内でも難民・移民の受け入れはかなり好意的なものであった。しかし、最近、難民・移民に対する国民感情が悪化した。イギリスはこれを嫌ってEU離脱の国民投票で離脱を決めた。フランス、スペイン、デンマーク、スウェーデン、イタリアなどでも反難民・移民の流れができつつある。ドイツもかなり激しくなってきた。テロなどが起きたこと、異文化・異宗教に対する苛立ちなどもその要因だ。また経済の不安がでてくると、これ以上の労働力はいらない、という判断もある。メルケル・ドイツの難民・移民への寛容政策が批判を浴びている。(つづく)
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