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2016-10-04 00:00
「小池新党」は無理筋だ
杉浦 正章
政治評論家
「騎虎の勢い」は誤用されるケースが多いが、本来の意味は「虎に乗った者が途中で降りると、虎に食われてしまうので、降りられないように、やりかけた物事を、途中でやめることができなくなること」を意味する。都知事・小池百合子は、まさにポピュリズムという虎の背にまたがって突っ走っている。小池新党を振りかざすかと思えば、知事の給与半減。コンクリが悪で、盛り土が善。その勢いは飛ぶ鳥をも落とすかのようである。ポピュリズムであれ何であれ、都民が幸福になればよいことだが、小池政治の弱点は、ポピュリズムの材料が無限に存在しないことにある。自転車操業なのである。ポピュリズムに生きる政治家は、やがてポピュリズムで倒れるという危うさを内包しているのだ。自民党幹事長代行で都連会長・下村博文は「小池氏のうまさは、何でも『ありそうなシチュエーション』を作っていくことだ」と述べているが、まさに至言であろう。
その「小池新党」だが本当にできるのだろうか。9月30日に開講式を行う「希望の塾」に関して、小池新党の布石だという説が飛び交っている。民進党の前原誠司までまともに受け取って「小池新党と橋下徹さんが結びついて、人気が出て新党ブームになる。民進党はいろんなところで埋没するだろう」と指摘。その上で「野党第一党の民進党という枕詞(まくらことば)がなくなるような状況、危険性がある、という危機意識を持つべきだ」と強調している。小池新党の国政進出への危機感を抱いているのだ。維新と小池新党の連携ができれば 民進党にとって悪夢だというのだ。事実、前維新共同代表・橋下徹も秋波を投げかけているという説がある。小池新党が国政に進出することへの危機感は、民進党ばかりではない、自民党にもある。総選挙に間に合わされれば、自民党議席も食われることは確実だ。だから1月解散説が勢いを増していると言う話もある。
もっとも小池新党は、元々都議会勢力確保を狙っての小池の発案であり、知事選前後から論議が盛り上がっていた。小池自身も「一つの選択肢」と明言している。しかしここに来てややトーンダウンしてきている。そもそもの狙いが、自民党を中心とする都議会勢力の分断にあり、小池の言う「 ブラックボックス」と呼んできた都庁内の意思決定プロセスの不透明さとの戦いである。自民党都連に院政を敷く前幹事長・内田茂との戦いでもある。従って、自民党が小池になびけば、問題は除去されるのだ。小池はまるで山姥(やまんば)が包丁を研いでいるような姿を見せつけて、脅しにかかっているのだ。
この小池の騎虎の勢いにまともにぶつかっては当分勝ち目はないと判断したのが、自民党執行部である。首相・安倍晋三が選挙後小池に会って「一本とられました」と甲(かぶと)を脱いでみせれば、自民党幹事長・二階俊博も「撃ち方やめ」を宣言した。二階は、小池の側近で都知事選で党の方針に従わず小池を支援した衆院議員・若狭勝(比例東京)を「厳重注意」にとどめたのみならず、衆院東京10区補欠選挙で公認候補とした。補選勝利には小池との連携が不可欠と判断したためだ。自民党本部にしてみれば、小池と対決することの得失を考慮した結果であろう。都議会自民党も一部を除いては小池との対決を避けつつある。小池が都議会で行った所信表明演説のあと、自民党幹事長・高木啓以下が拍手をしたほどである。自民党都連にはなお反小池感情がくすぶっており、それが小池応援の区議7人を除名勧告処分にする方針を決めるという、独断行動を導いた。党本部の意向を無視した関東軍的な動きである。これに対して若狭は「即刻撤回すべきだ。1週間ほどで処分が撤回されなければ離党も辞さない」と牽制球を投げている。しかし若狭も本気ではあるまい。ネットのインタビューで「新聞が大きく書いて、一人歩きしている」とも述べている。都連が除名勧告を取り下げればすむという話だ。
小池の優秀なブレーンでもある若狭は小池新党に関して「新党を作ると自民党の中で小池さんの主張を正論だと思う人が、新党に加わることを躊躇すると思う。だとすると、新党を作らなくても、都議会自民党のなかにこれから小池知事のことをきちんと支えていこうという人が仮にいるんだとすれば、ソフトな柔軟な形で都議会の構成を小池支持派で増やしていくということも選択肢じゃないかと思う」と発言している。実にまっとうな見方だ。「自民党が対決姿勢を表せば、すぐに小池新党になっていくと思う」とも述べており、要するに、小池新党は出刃を研いでいるだけで、これを使うかどうかは自民党の出方次第という訳だ。本来中央政治と異なり、地方自治体の長と議会は基本的には対峙の中からベストの選択を生み出す民主主義のシステムであり、別々の選挙で選出される。したがって議院内閣制をとる中央政治とは異なる。与党が内閣を握るようなシステムではないのだ。小池が多数のシンパ獲得を目指して新党を作ることは、地方自治にはなじまない。無理筋でありやめた方がいいことだ。
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