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2016-09-29 00:00
(連載2)「ガラパゴス恐怖症」で問題の本質を見誤るな
鈴木 一人
北海道大学公共政策大学院教授
こうしたインフラ部分のスペックの問題を、コンシューマー向けのデバイスを評価するときに使う「ガラパゴス」という概念を持ち出して議論することに疑問を抱くようになった。つまり、日本のものづくりは単にエンドユーザーに選んでもらうためのものだけでなく、その中間にあるキャリアやプロバイダーなどに選んでもらうものであり、そこで評価される軸は何なのか、ということを考えなければならない。
宇宙システムの場合、オーバースペックであるかどうかということよりも、むしろシステムの信頼性や利便性、さらにはそのシステムを利用する際のコストがどのくらいかかるか、といったことが重要な論点になる。その上でスペックが良いものであれば活用するし、もしオーバースペックでコストが高ければ敬遠される。
何が言いたいかというと、「ガラパゴス」という便利で使い勝手の良いバズワードが出回ってしまったために、それに縛られて何でもかんでも「ガラパゴスはいけない」という議論一色になってしまうと、問題の本質が理解できなくなる、ということである。日本における(日本だけとは限らないが)言論空間はしばしばこうしたバズワードに支配され、思考停止状態のままバズワードを唱えていれば、何かを表現した気になる、という環境にある。そのため、本来ならば「ガラパゴス」という表現を使うべきではない問題に対しても、「ガラパゴスは避けなければならない」という呪文を唱えることによって、論点がずらされ、本来議論すべき論点からずれた議論になってしまう。
政策決定は様々な要素によって構成されるが、しばしば、政策を巡る議論はメディアによる論調やバズワードといった与えられた枠組みによって無意識のうちに思考が形成され、それが議論を誘導する。そうしたバズワードやはやり言葉に振り回されることなく、政策の本質的な問題を考え、議論することを、公共政策に関わる一員として常に胸に刻んでおきたい。(おわり)
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