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2007-01-18 00:00
連載投稿(2)長期的国益を見据え、普遍的価値観の重要性をじっくり説明せよ
鈴木 馨祐
衆議院議員
アジア地域における経済的な統合は経済的な相互依存の深化により不可避なものであって、普遍的価値観などにとらわれて統合への参加が遅れるようなことがあっては、日本の受ける経済的損失は計り知れない、という反論があるであろうが、私はそのような議論は長期的に見れば日本の国益を損なうのみならず、域内諸国の長期的発展にもマイナスの効果しか与えないと考える。紙面の制約上2点に絞って問題点を指摘したい。
問題点の第1は、これは中国経済において顕著であるが、自由・民主・人権・法の支配等の普遍的価値観は社会の土台であって、その結果それらが欠如している社会においては、常に経済の論理よりも政治の論理が優先してしまうため、経済的な予見可能性が著しく低い経済、つまり市場経済でなく無秩序経済を形成してしまうという点である。そのような状況下では、日本や欧米の資本の投資環境は非常に脆弱であると考えざるを得ない。何の非も無く利潤を生んでいた企業がある日突然、非合法といわれ儲けを奪われるような事態も考えられる状況となるわけで、わが国の企業をリスクにさらすような市場への投資促進策を政府が音頭をとって進めるわけにはいかないのである。
また第2には、これらの普遍的価値観の欠如は海外からの技術移転やさらにはその国自体のイノベーションのインセンティヴをも削ぎ、当該国の技術的発展・経済的発展の障害となるという点である。例えば、知的財産権の保護がなされる保証の無い国に技術移転をする先進国の企業があるとは思えないし、開発してもその果実を横取りされる可能性が高いならその国の研究者の開発意欲も高まりようが無いのである。
このような点を考慮すれば、例え経済レベルの統合であっても現在の経済の相互依存度が深化しているからと言って、日本が普遍的価値観の問題を棚上げし、闇雲に拙速に経済統合を急ごうとすれば、短期的には日本企業のためとなったとしても長期的には日本企業にとっての良質の消費マーケットの育成の失敗を招くこととなり、結局利益を得るのは不正コピーで技術を盗んだ中国等の企業だけという結果になりかねない。
共同体というものや統合は、ある意味で政府のお墨付きとも言える枠組みである。原則的な価値観の浸透による社会自体の構造改革を促すことなく、拙速に表面的な経済統合のみを進めようとすれば、そこには大きなリスクがあるということを認識しなくてはならない。
そのためにも日本の影響力や日本が受ける影響をある程度担保できる2国間のEPAを積極的に進めることについては異論は無いが、そうではないマルチの枠組みについては普遍的価値観の問題がないがしろにされないような形が重要であり、そのためにも価値観を共有する豪州やNZ、インド等を加えた上で、長期的視野に基づいた参加国の構造的変化を促すような仕組みの統合を日本としては進めていくべきであろう。そして、一部のASEAN諸国や中国等に対しても、何故このような普遍的価値観が重要なのかを価値観を共有する他の域内国とともにじっくりと説明し、真に必要性を認識してもらうことが今後のWIN-WINの関係構築への第一歩なのではないだろうか。(おわり)
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