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2016-09-24 00:00
(連載1)新たな発想で国際安全保障の枠組みを
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
日本人は国連が好きだ。国連は世界の最高機関で強大で、正義の味方と思っている。確かに国連が果たしている役割を過小評価することはできない。しかし、現実は理想とははるかに異なる状態であることも認識しておく必要がある。UNはUnited Nonsenseの略だとスウェーデンの研究者が冗談を言っていた。半分冗談、半分本気だ。国連は名前が示すように国家の集まりだ。例えば人権問題について決めるとき、世界のかなりの国では人権が蹂躙されている。非民主主義国も数多い。そうした国が集まって何かをしようといっても、限界がある。つまり何も大したことができないのが国連という組織なのだ。
もっと具体的な部分では、国連の安全保障理事会の常任理事国に拒否権が与えられている問題がある。安保理常任理事国は、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスだ。この内の1カ国でも反対すれば、安保理は何もできなくなる。世界の大きな国際問題でアメリカ、中国、ロシアが絡まないものはあまりない。いずれかが主体的に関わっているものも多い。その場合には拒否権が発動されるわけで、実質的に安保理は機能しなくなっている。米ソ冷戦の時は米国かソ連が拒否権を発動し国連は機能しなかった。
その時代の大きな戦争、動乱、危機としては、中東戦争(1次、2次、3次、4次)、パレスチナ紛争、朝鮮戦争、ハンガリー動乱、チベット動乱、ベトナム戦争、中印国境紛争、キューバ危機、中ソ国境紛争、カシミール紛争、イラン・イラク戦争、フォークランド紛争、アフガニスタン内戦などが挙げられるが、ほぼすべて5つの常任理事国が何らかの形で積極的に絡んでいる。国連安保理はほぼ不能状態に陥った。何も決定することができなかった。変化が起きたのは米ソ冷戦が終わってからだ。象徴的だったのは湾岸戦争であった。イラクのクウエート侵攻に対し、国連は多国籍軍(連合軍)の派遣を決定し、アメリカを中心とした多国籍軍がイラクを空爆して始まった戦争である。その他にもルワンダ紛争やシエラレオネ紛争、ソマリア内戦、アルジェリア紛争などのアフリカでの内戦でも国連が存在感を示した。
しかしまた状況は変わりつつある。第二次世界大戦から1990年までは、アメリカとソ連の対立が中心であり、それが解消すると安保理決議が出来やすい環境にはなったのである。しかし、最近は中国が経済成長を行い、それとともに覇権争いにも絡んでくるようになった。またロシアのプーチン大統領は、米ロ協調路線ではなく、独自路線を明確にし始め、ウクライナ問題などでは激しくぶち当たるようになった。つまり安保理常任理事国の協調の時代は終わり、対立の時代へと向かいつつあるのだ。米中対立、米ロ対立が顕在化する今、特にアジアの問題には国連は無能化しつつある。(つづく)
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