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2016-09-11 00:00
(連載2)日韓スワップ協定で日本は何を得るのか
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
今回、韓国がスワップ協定を持ち出してきたことの背景と意味についても考えたい。第1に、韓国政府は否定するものの、現在の韓国の経済状態は悪く、資金運用が困る事態が想定されていることが考えられる。韓国銀行(中央銀行)が8月3日公表した7月末現在の外貨準備高は3713億8000万ドル(約37兆8000億円)で、世界的にも7位にランクインされるものである。韓国経済は外国資本の割合が高く、ウォンの価値の下落や外国資本の流出などによって状況が一気に悪くなることが想定される。韓国政府は「問題ない」と強調するが、実際にはかなり不安要素があるのではないか。
第2に、朴政権は親中路線を明確にして、中国頼みの方向を打ち出してきたが、THAAAD配備に関して中国との関係が相当に崩れている。朴政権は中国がどこまで韓国の経済危機に責任を持ってくれるのか不安になってきたのではないか。中国経済にも暗雲が立ち込めている。中国の外貨準備高は世界一で圧倒的だが、実際に使える外貨額はかなり限定されているといわれる。かなりの部分に紐付け、つまり予約がされているというのだ。正確なところはわからない。少なくとも、中国に全幅の信頼をおける状態ではないということだろう。
第3に、北朝鮮の激しい挑発である。核実験やミサイル実験が頻繁に行われるようなった。大規模攻撃が来なくても、ジャブのようなミサイル攻撃や偶発的な戦闘などが起きても、実は韓国経済には大きな影響を与える。外国資本は相当に流出するし、ウォンも急落する可能性がある。北朝鮮のミサイルはソウルを火の海にしなくても、山間部へのミサイルだけでも韓国に深刻なダメージを与えることができる。南北対立が激しくなれば、当然これくらいのことは想定することが必要だ。
第4に、日本との関係改善はできそうで、遅々として進んでいない。慰安婦像は撤去どころか海外でも新たに作られている。両国の国民感情も悪化したままだ。日本は「和解・癒やし財団」に約束通り10億円の資金提供を決めた。これを契機に韓国は日本との関係改善を進めることを考えているのだろう。ただこれはなかなか進んでいないという現実もある。慎重に韓国政府の対応を見守ることが必要だろう。日韓通貨交換(スワップ)協定は確かに韓国の側にメリットが大きく、日本はすべきでないという議論はある。しかし交渉の仕方によっては、リスクはそれほど大きくなく、メリットもあるものになる。交渉次第だ。東アジアが非常に不安定になっている中で、日韓関係の改善は両国において重要な課題だ。しっかりと交渉し、日韓ともにメリットのある通貨交換(スワップ)協定としてほしいと願う。拙速は避けたいところだ。(おわり)
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